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【RENTAL EVENT】八倉巻弘行個展 「幻視」

【展示について】

何もないところから生まれる“現像”を中学2年で体験してからずっと、フィルム写真に魅せられてきた。

四角いドットのピクセルで表現されるデジタル写真にはない人肌感や、何とも言えない色見から醸し出される独特の雰囲気がいい。中でもフィルムサイズが8×10インチや4×5インチの大判カメラは、ピントが合う範囲=被写界深度の浅さで、他にはないボケが作れ、伝えたいものに焦点を絞った情緒的な表現ができる。プロになってファッション撮影が多かった頃は、ぬめっとした独特な色や雰囲気を醸し出す8×10のポラロイドを、よく入稿用原稿にもした。毎回1枚きりの一発勝負だから失敗もあるけれど、それが逆に味となり、人間味が出てくる。アドバタイジングフォト撮影と並行して、1991年頃から、自身の脳裏に浮かぶ、誰も見たことがないような視覚世界も8×10や4×5を駆使し、創り続けた。肉眼とは違うカメラの眼、僕のもうひとつの視覚世界を形にしていった。

学生の頃は、カラスの死骸や富山の祭りのお面、地面につくほどロン毛の路上生活者など、実在するものを僕独自の視点で沢山撮った。今そこで起きている印象的な出来事は、訴えかける力も強い。けれど、それらも誰もが撮れるもの、誰かは見たものに違いはない。今も作品はすべて実写が基本だが、僕の脳裏にしか存在しえない“幻視”を、一から創作している。創作の源には女性のヌードが多い。

裸を撮ってから不均等な部分は修正して完璧なマネキンのように仕立て、生々しさを消した後、ひらめきに従って意図的に不協和音を生じさせていき、その後その時々に脳裏に浮かんだ“幻視”を形にしていく。

40年近くその変革も撮ってきたファッションへの“追憶”、抑圧からの“解放”、着飾り化粧する“武装”、“両眼”を通し右脳と左脳に映し出される世界、新たな時代への“覚醒”と“多様”。どこよりも何よりも平和な日本の今に生きている、僕のもうひとつの視覚世界の集大成が、この「幻視-Visions-」だ。これらを目にして、ほんの少しでも心が動いたりざわついたりしてくれたなら嬉しい。

八倉巻 弘行

(PROFILE)

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八倉巻 弘行

1959年1月3日生まれ、富山県魚津市出身。1985年「ICE・WAVE」でJPS入選。27歳からファッションフォトグラファーとして活動し、‘80~‘90年代の日本のファッション文化を牽引。1998年、美容に特化した女性誌「VoCE」創刊を皮切りに、ビューティーフォトの手腕も評判を呼び、以降現在まで、時代を創る第一線のフォトグラファーとして活躍中。日々依頼されるアドバタイジングフォトとは一線を画した、ヌードを軸に8×10(エイトバイテン)や4×5(シノゴ)特有の被写界深度で魅せる八倉巻のアートワーク「幻視」シリーズの、今回は初個展となる。展示作品を含む82点を厳選収録した写真集「幻視-Visions-」が講談社エディトリアルより発売中。クリエーター達から絶大な人気を誇る「スタジオ オートグラフ恵比寿」および「スタジオ オートグラフ神泉」の主宰者でもある。

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