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(INTERVIEW)

松竹のSHUTLプロジェクトメンバーに聞く、SHUTLに込めた想いとビジョン

松竹株式会社が、2022年に解体された中銀カプセルタワービルのカプセルを受け継ぎながら、今の時代に応答する文化を発信していく新たなアート&カルチャースペース「SHUTL(シャトル)」

1895(明治28)年の創業以来、演劇と映画を中心に日本のオーセンティックな文化を発信し続ける松竹が、SHUTLにどのような想いを込めて取り組んでいるのか。
今回は、SHUTLの企画・運営を担当する株式会社マガザンが聞き手となり、松竹のSHUTLプロジェクトメンバーのインタビューをお届けします。

SHUTLのための組織横断的なメンバー構成

松竹・SHUTLプロジェクトメンバー 大上遥之、山﨑基、大野百合子、藤井瑛二

まず、おひとりずつ自己紹介をお願いします。

鈴木:不動産本部の担当執行役員の鈴木太一郎と申します。
このプロジェクトに限らず、松竹における不動産事業全般を見ています。新しいビルの開発、既存ビルの維持管理や、テナントのリーシング、またグループ会社でも不動産を保有しているので、そのサポートやアドバイス全般も担っています。

鈴木執行役員

鈴木執行役員

山﨑:山﨑基と申します。不動産運営部営業室という部署に所属しています。
前職はショッピングセンターにいたこともあり、保有物件のテナントリーシングを行っております。今回のプロジェクトのリーダーです。

大野:大野百合子と申します。不動産戦略部業務室に所属しており、普段は不動産本部の経理や総務的な仕事をしています。

大上:大上遥之と申します。不動産戦略部開発室に所属しています。
普段、不動産本部に関わる戦略の策定や、保有する不動産をどう活用していくか、どう建て替えていくか等企画立案を主に担当しています。

藤井:不動産運営部施設室の藤井瑛二と申します。保有物件に係る営繕業務を主に行っています。 SHUTLでは建築部分のハード面を担当しています。 よろしくお願いいたします。

鈴木:不動産本部は全部で6室ありますが、今回のメンバーは4人とも所属部署が異なります。
SHUTLは部内を横断したプロジェクトであり、それぞれの個性や特性が活かせるようにと考え、あえてそのような編成で挑んでいます。

今回のSHUTLのプロジェクトというのは、松竹においても特別なプロジェクトなんですね。

松竹グループミッションと呼応するSHUTL

このSHUTLというプロジェクトが始まったきっかけを教えてください。

鈴木:SHUTLが建てられる土地は、松竹本社の東劇ビルに隣接した角地で、数年前に取得したものです。
将来的な東劇ビルの建替えの際に一体開発できるようにと取得した土地ですが、ここで駐車場などの安定的な収入を得るということではなく、建替えまでの短期的な利用を前提として、実験的なプロジェクトをやりたいということに加え、将来的な開発にも繋がるものにしたいと、以前より考えていました。

東劇ビル

東劇ビル

東劇ビル隣接地(撮影:山根かおり)

東劇ビル隣接地(撮影:山根かおり)

鈴木:その中でも色々な案がありました。
松竹グループとして「日本の伝統文化を継承、発展させ、世界文化に貢献する」というミッションを掲げるなかで、当社の保有物件が集中する東銀座エリアが日本文化の発信地として最大の拠点になると思っています。
世界唯一の歌舞伎専用劇場である歌舞伎座、新ばし芸者の発表の場である東をどりを起源とする新橋演舞場という伝統文化の発信拠点に加えて、将来的な日本文化の発信拠点になりうるのがこの東劇ビルと、その向かいにある銀座松竹スクエアです。
東劇ビルの将来的な開発を見据えて、今までとコンセプトの異なる、新しい日本文化の発信ができるようなスペースにしたいというところが、SHUTLに対しての最初の大きなアイデアでした。

なるほど、今回のプロジェクトは松竹のミッションと強い繋がりがあるのですね。東劇ビルの隣接地をよりアクティブに活用していこうというなか、なぜ中銀カプセルタワービルのカプセルを活用することになったのですか?

藤井:東劇ビルからもほど近いこともあり、以前より中銀カプセルタワービルについては存じておりました。
今回、中銀カプセルタワービル解体のニュースに触れ、近隣エリアで同時代を生きてきた東劇ビルとの運命的なストーリーを感じ、中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト様へお声がけいたしました。
東劇ビルは1975年の竣工で、中銀カプセルタワービルが1972年の竣工なので3年差と建てられた年代が近いことにも親近感を持っています。
中銀カプセルタワービルは、建築としての価値にとどまらず、歴史的な変遷のなかで醸成された様々な文化的側面も魅力なので、今回のプロジェクトにおいて共鳴できる部分が多くあるように感じました。そして中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト様にご協力いただき、カプセルを譲っていただくことができました。
様々な地域にカプセルが運ばれていくなか、中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト様より、銀座・築地エリアにカプセルが戻ってくるということが、地域としても喜ばれるのではないかというご意見もいただいておりましたので、今回このような運びになり、とても良いご縁になったと思っています。

大野:2020年の春に東劇ビルの隣接地を活用するプロジェクトが立ち上がり、各部署からメンバーが選出されました。
その中で、どうすれば新しい日本文化を発信するというテーマを体現できるか、松竹あるいは東銀座らしさをどう打ち出せばいいのか悩んでいた時に、中銀カプセルタワービルの解体を知り、中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト様へコンタクトしたところ、ほどなくお返事をいただき最終的に2基のカプセルをいただく運びとなりました。

鈴木:松竹では、 登録有形文化財の第1号である京都南座の保存・活用をしていることもあり、以前より日本の伝統的な建築を保存・再生していくという活動を行ってきました。今回のカプセルの活用はこれまでの取り組みとの親和性が高く、全ての想いが繋がったと感じています。

中銀カプセルタワービル(提供:中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト)

中銀カプセルタワービル(提供:中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト)

京都南座

京都南座

そうなんですね。そこからプロジェクトを進めていくなかで、私たちマガザンとの出会いがあり一緒に考えていく運びになったと思います。マガザンチームとプロジェクトを行うことになった経緯を教えていただけますか。

山﨑:私は松竹には中途採用で入っています。前職で京都のショッピングセンターに勤めており、マガザンの代表・岩崎さんとはその時に既に出会っていました。
松竹は京都南座やMOVIX京都など、京都に多く物件を保有していることもあり、中途入社してからもテナント様とのイベントやスペースの有効活用を、岩崎さんに定期的にご相談していました。
岩崎さんとの情報交換をする中で、このプロジェクトが立ち上がりましたので、自然な流れでご相談をしたというところでしょうか。

そう考えると長いお付き合いですよね! マガザンチームが加わり進めていくなかで「SHUTL」というネーミングと、SHUTLの3つのモチーフを考えましたが、このモチーフについてご紹介いただけますか。

山﨑:カプセルの姿かたち、そして中銀カプセルタワービルの建築家・黒川紀章の「カプセル宣言」からインスピレーションを得て、「スペースシャトル」「往復便」「機織りの杼(ひ)」という3つのモチーフを考えました。
このモチーフには、メンバー内でもそれぞれに想いを込めています。
縁あって京都のマガザン様と東京の松竹とで一緒に進めていますが、松竹の創業地は京都なんです。
SHUTLでやりたいことにも繋がりますが、京都と東銀座を往復させて文化を紡いでいくというところに大きな意味がある、と個人的には思っています。

藤井:東京という場所で、松竹の創業地である京都のエッセンスも入れていくという話もありましたが、3つのモチーフは「未来」と「伝統(過去や歴史)」を「繋いでいく」という文脈として捉えることができます。
「スペースシャトル」は未来的なイメージ。
「織物の杼」は伝統(過去や歴史)。
それらを繋ぐ「往復便」。
この3つは実はそれぞれ独立したものではなく、未来と過去を繋ぐシャトル便としてSHUTLというスペースが動いていく、という想いも名前に込められています。

SHUTL 3つのモチーフ

SHUTL 3つのモチーフ

ありがとうございます。SHUTLのスローガンとクリエイティブコンセプトについても教えてください。

藤井:自主企画とスペースレンタルとの両輪で様々なコンテンツをインストールしていくなかで、松竹グループのミッションを発信する場所として、「SHUTLは伝統と現代の新たな接続方法を生み出す実験場」というスローガン、「未来のオーセンティックを生み出す」というクリエイティブコンセプトを掲げています。
これまでも松竹は、歌舞伎を始めとして日本のオーセンティックな文化を長きにわたり発信し続けてきました。
SHUTLにおいては、自主企画として今の日本の伝統文化を未来に向けて再定義・再評価する機会をつくります。またスペースレンタルでは、この場所が松竹の中で完結するのではなく、開かれた場とすべく現代アーティスト、ファッション、音楽など、これまでの松竹のイメージを良い意味で覆していただけるような利用を期待しています。地域やクリエイター、その他の業種の方々などとコラボレーションしながら共に新しい文化を模索・発信したいと考えています。
これまでも、松竹では例えばスーパー歌舞伎など革新の中の伝統という観点でコンテンツ開発に取り組んでおり、そういった姿勢は松竹グループのミッションを体現していると思っています。
このスペースにおいて「これからの本物」を松竹として見出していくことを楽しみにしています。

SHUTL ロゴとコンセプト「Launching Authentic Futures」

SHUTL ロゴとコンセプト「Launching Authentic Futures」

松竹がカプセルを活用する意義

カプセル視察風景(撮影:山根かおり)

カプセル視察風景(撮影:山根かおり)

今年4月にSHUTLの情報解禁をしましたが、松竹がカプセルを活用した新しいオルタナティブスペースを立ち上げる、というニュースに早速多くの反響をいただいていますね。

藤井:そうですね。これまでの松竹のイメージと異なった雰囲気のスペースになるので、「こんなスペースを作っているんだ!」というところは、良い意味での意外性をもって受け止められているように感じます。

山﨑:東劇ビルから中銀カプセルタワービルは、徒歩で行けるくらいの近所に元々ありました。
社内で建築に詳しくない人も、中銀カプセルタワービルは知っている方が多いので、社内からのリアクションもありましたね。

松竹の今までのイメージとは違う、実験性や新しさが伝わっているんですね。

山﨑:そうですね。特に建築ファンの中で、カプセルがどこに移動するのか注目している方は本当に多いので、松竹が活用するというニュースを見て驚いているのが伝わってきます。

鈴木:世の中で、松竹がカプセルを保存・再生するということに大きな注目が集まっていますが、目的は「新しい日本文化の発信」なので、これから何をやるかというのが最重要と考えています。
このエリアを日本文化の発信拠点にしていくプロセスのなかで、ここにアーティストやクリエイター、スタートアップ企業など若い世代が集まってくることで、街が長く発展していくことになると思います。
将来的な東劇ビルの開発に繋いでいくためのプロジェクトとして、カプセルに注目が集まるだけでなく、魅力的な企画を生み出していくことに、将来的な意味があると思っています。

カプセルを収納し、新しい企画を行っていくスペースの工事がいよいよ始まりましたね。

藤井:そうですね。松竹は一企業でありながら、これまでも歴史的な建築物の保存・活用を積極的に行ってきました。手前味噌ながら日本の伝統文化にここまで向き合っている会社はそこまで多くないように思います。近年、価値ある建築物も多く失われているなかで、松竹では2013年に建替えた5代目の歌舞伎座や2018年に耐震改修を行った京都南座は、現在も興行を続けています。
それは、我々が地域に愛されるランドマークを建築物としてだけではなく、その建築物の中で行われるソフトも担っているところが大きいのだと思います。
ただ作るだけではなく、地域の中で一緒に歩んできたということが、松竹としての財産であり、実績なのかなと思います。
今回のプロジェクトでも、松竹としての取り組みは一貫しています。今回のSHUTLにおいても、地域の皆さんに愛されるようなスペースを未来に繋いでいけるといいなと考えています

工事の様子

工事の様子

そうですね、地域に新しいスペースを生み出すために、まずは建築が大変ですよね。

藤井:そうですね。今回のSHUTLは特殊なスペースですね。

SHUTLにインストールするカプセルを2基取得しましたが、1基は修繕・復元されたオリジナル、もう1基は、タワー解体時の外観を極力そのまま残していただいたスケルトンです。
保管されているカプセルを視察した際、このスケルトンは外観の風合いや素材感がとても魅力的だったので、特別にこのままの状態でいただくことになりました。

対外的には、いかに「カプセルを活用するか」というところが大きいのですが、SHUTLとしてはハードとソフトを両立させることが重要と考えています。
あくまでSHUTLという施設全体が利用できるスペースなので、カプセル以外の部分や様々な余白部分も含めてにぎわいや反響が起きた時に初めてこの建築が完成すると思います。

カプセルを保管・活用するだけでなく、カプセルを取り込みながらも、その空間を自由に実験場として活かせるようなスペースを意識しているんですね。

SHUTL 2基のカプセル (撮影:山根かおり)

SHUTL 2基のカプセル (撮影:山根かおり)

これから始まるSHUTLの実験

SHUTLでどういったことを提供していきたいか、お聞かせください。

藤井:松竹は演劇や映画など、その場所ならではの体験を提供しているというところもあるので、この場所においてもここに来なければ体感できない、五感に訴えるような体験を提供したいと思っています。
余談ですが、新卒採用の面接を担当した際、「動画配信で映画が観られるのに、なぜ映画館に来る意義があると思うか」という質問に対して、「映画館で映画を観るというのは、1つのイベントなんです」と答えてくれて、ハッとしたんです。
それは映画をただ観るだけでなく、その日に着ていく服、友達との会話、出会い、風景など、行くことによって生まれるストーリーがあって。そういったものに若い世代は価値を感じているのだなと思います。
便利になっていく世の中でも、場所性を大切にすることで地域との繋がりやその歴史を感じてもらえるきっかけとなる場所になれると良いですね。

大上:松竹のイメージにはないような新しいことをやってるな、と伝わるような場所にしていけるのが理想的で、それが新しい日本文化なんだな、と様々な年代の方に思ってもらえるように取り組んでいきたいと思っています。

ありがとうございます。最後に、今後の予定をお聞かせください。

藤井:今年の秋オープンに向け、まず建物の完成を目指して工事を進めています。
それまでの期間は、オープン以降の企画の準備をしながら、noteや各SNSにて定期的に情報を発信しておりますので、いろいろな方に興味を持ってもらえるよう進めたいと思います。

山﨑:松竹がカプセルを使って東銀座で何をするのか、という部分に期待を持っていただいていると思います。
まずは「SHUTLとはこういう場所です」と表現できるような企画を、マガザンさんと一緒に知見を合わせながら準備していきます。

ありがとうございました!

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