ONLINE STORE

Contact 👉

(INTERVIEW)

黒川紀章建築都市設計事務所・藤澤友博さんに聞く、メタボリズムとSHUTL(前編)

建築家・黒川紀章という人物と、事務所の仕事

2022年に解体された中銀カプセルタワービルのカプセルの魅力を再発見し、今の時代に即した文化を発信していく新たなアート&カルチャースペース「SHUTL(シャトル)」

建築家・黒川紀章が設計した新陳代謝をコンセプトとしたカプセル2基とそれらを格納する新たな空間を舞台に、日本文化そのものの新陳代謝の展開を目的とし、現代の表現者が日本文化と出会い直し、自らの表現と伝統を結びつけることで、「未来のオーセンティック」を生み出す実験場(ラボ)として動き出します。

今回、黒川紀章建築都市設計事務所で、黒川紀章のDNAを受け継ぎながら様々なプロジェクトに取り組んでいる藤澤友博さんにインタビューを行い、黒川紀章の建築・思想を未来に受け継いでいくその取組みから、藤澤さん自身の仕事や想いまで、前後編の2回に分けて深掘りします。

今回は、建築家・黒川紀章の功績、そして現在に受け継がれているものについて伺いました。

インタビュアー:
・松竹株式会社 藤井 瑛二、松野 麗
・株式会社マガザン 武田 真彦、黒田 純平、岩崎 達也

まずは自己紹介をお願いします。

藤澤:藤澤友博と申します。黒川事務所には2011年に入社しました。いろいろな用途の建物を担当してきましたが、美術館関係が多かったと思います。
オランダのゴッホ美術館増築、広島市現代美術館増築・改修、福井県立恐竜博物館の増築・改修、現在は和歌山県立近代美術館の改修などを担当しています。黒川事務所がこれまでに設計した建築作品に関わったり、新規プロジェクトも担当しながら設計業務を行っています。

新しいものから改修まで、幅広い建築を担当されているのですね。

藤澤:黒川紀章の建築は国内外に数多くあり、古くなった建物も増えてきたため、そこで私たちが貢献できる機会はありますね。

黒川紀章建築都市設計事務所について、そして黒川紀章さんの実績についてお聞かせください。

藤澤:弊社は1962年に黒川紀章が設立した事務所です。当時黒川は大学院生で、学校に籍があった状態でした。丹下健三さんの元で働いた後に、独立した形になります。
黒川は学生時代から有名な建築家でした。1958年第五回世界建築学生会議に日本代表として参加し、有名になりました。学生時代から頭角を現し、世界に進出、そしてメタボリズム運動によって、さらに有名になりました。
単に建築デザインだけでなく、建築思想等を発表することも多かったため、メディアに取り上げられる機会は多かったと思います。

黒川紀章とメタボリズム

メタボリズム運動では、黒川紀章さんはどのような活動をされていたのですか?

藤澤:メタボリズム運動の明確な定義はないのですが、それぞれがその大きな枠組みの中で活動していました。その中でも黒川紀章は、グループ最年少でした。
一番大きな出来事は、1970年大阪万博にて「空中テーマ館住宅カプセル」「タカラビューティリオン」「東芝・IHI」のパビリオンをデザインしたことです。
その時に黒川がデザインした住宅カプセルは、丹下健三さんが設計されたお祭り広場のスペースフレームから吊られる形でした。当時のカプセルは今のような矩形ではなく、みかんを上から見たような形状で、中心に対して各要素が接合しているものでした。
また、タカラビューティリオンにおいては、フレームの中にカプセルを入れていく形式の建物でした。
これらが後の中銀カプセルタワーに繋がっていきます。
また「カプセルホテル」も弊社で設計したもので、その後日本中に広がっていきました。今も大阪に当時のカプセルホテルは残っていますよ。

タカラビューティリオン 写真:大橋富夫 提供:黒川紀章建築都市設計事務所

空中テーマ館 写真:大橋富夫 提供:黒川紀章建築都市設計事務所

カプセルホテルの源流は、黒川紀章さんだったんですね。確かにカプセルホテルには宇宙的な印象がありますね。

藤澤:そうですね。大阪万博で生まれたアイデアは、カプセルホテルという形で建物内部に、中銀カプセルタワービルで都市空間に展開したとも言えます。

大阪万博と中銀カプセルタワービルの設計は、それぞれ関係性はあったのですか?

藤澤:カプセルは、空中テーマ館では屋根から吊られ、タカラビューティリオンではフレーム内部に組み込まれています。両パビリオンの設計は、中銀とほぼ同時期となるため、2つのパビリオンがいろいろな形でカプセルタワーに影響を与えたと思います。

この頃の黒川紀章さんの有機的な建築の姿は、やはりメタボリズム運動に基づく着想が大きかったのでしょうか?

藤澤:そうだと思います。
そして、菊竹さんなどの他のメタボリズムメンバー内でも競争意識があったため、黒川としての独自性を目指していたのではと思われます。

1970年代 黒川紀章氏と中銀カプセルタワービル 写真:大橋富夫 提供:黒川紀章建築都市設計事務所

黒川紀章から受け継がれるものと、受け継ぐ術

現在の事業の内容を改めて教えていただけますか?

藤澤:黒川紀章が存命の時と亡くなったあとで大きく変わっています。
当時は、新しい作品を次々と作り出していましたが、亡くなった後には黒川紀章の残した作品を増築・改修などを通じ、現代の建物仕様に合わせることで後世に受け継いでいこうという流れがあります。
また、黒川紀章が残した思想・デザインを今の時代に合わせて発展させていくことも重要な仕事です。

黒川紀章さんのデザインや思想を今の時代に発展させていく、その仕事のプロセスはどのようなものですか?

藤澤:黒川紀章が遺した言葉にこのような言葉があります。
「建物自体はいずれ古びて無くなるものであるが、思想は永遠に残る。」
黒川は生前、建築やデザインなど目にみえるもの、また思想としての自分の意思と、その両方を残しました。実際、書き遺した本は100冊以上あり、それらを通じて、思想的な啓発を受けつつ、プロジェクトに取り組んでいます。
また、黒川の表現にはいろいろな時代があって、「メタボリズム」「共生の思想」から、抽象的な表現を用いた「アブストラクト・シンボリズム」、曲線をつかった「フラクタル」という表現もありました。
私たちはそれらの表現や背景の思想を今の時代に調和・発展させつつ、デザインを行っています。

  • 黒川紀章氏の書籍 提供:黒川紀章建築都市設計事務所

  • 黒川紀章氏の書籍 提供:黒川紀章建築都市設計事務所

  • 黒川紀章氏の書籍 提供:黒川紀章建築都市設計事務所

  • 黒川紀章氏の書籍 提供:黒川紀章建築都市設計事務所

とても興味深いですね、本のほかにも黒川紀章さんの資料はあるのですか?

藤澤:はい、黒川が設計時に作成したスケッチや設計図等の資料は数多く残っています。
黒川は、打合せの際自らスケッチを書き、それをスタッフが具現化していくというやり方をしていたので、このスケッチが建物の原型と言えると思います。
カプセルのスケッチも一部は残っていますよ。

黒川紀章さんについての展示をSHUTLで開催したいですね!

藤澤:中銀カプセルタワービルのほかにも銀座・東京付近にて弊社で設計した建物があるので、それらを含め、ぜひSHUTLで見ていただきたいですね。

(PROFILE)

藤澤 友博

東京都生まれ
早稲田大学理工学部建築学科卒業
University of East London M.Arch修了
2011年黒川紀章建築都市設計事務所入社
現在、同事務所設計部課長

黒川紀章建築都市設計事務所・藤澤友博さんに聞く、メタボリズムとSHUTL。

次回の後編では、黒川紀章とSHUTLがどのように呼応していくのか、そして黒川紀章建築都市設計事務所・藤澤さんの仕事の魅力について、さらに深掘りします。ぜひお楽しみに!

「SHUTL」では、黒川紀章のカプセルを銀座・築地エリアに戻し、再生・活用しながら、伝統と現代の新たな接続方法を生み出す実験場(ラボ)として、「未来のオーセンティック」を生み出すことをコンセプトに掲げ、挑んでいきます。

SHUTLのグランドオープンが2023年10月7日(土)に決定し、第1回自主企画の開催も決定いたしました。

SHUTLの最新の情報や、わたしたちがSHUTLで紹介したいと思っているさまざまなアートやカルチャーについて、引き続きこのJOURNALと各SNSにてお知らせしていきます!ぜひご注目ください!

WEBサイト

SNSアカウント

(02)

関連するイベントと記事

Related Events And Article 合わせてこちらも

(Contact)

SHUTLへのお問い合わせ

Launching Authentic Futures SHUTL

SHUTL is a gallery for exploring new ways of connecting tradition and modernity.

SHUTLは現代の表現者が、伝統と出会い直し、時間を超えたコラボレーションを行うことで新たな表現方法を模索する創造活動の実験場です。スペース利用から、メディアへの掲載、コラボレーションまで、どうぞお気軽にお問い合わせください。

Contact 👉