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(REPORT)

【SHUTL EXHIBITIONS 2025:REFLECTIONS】2025年、SHUTLの展示──前編

新年のご挨拶

2026年、あけましておめでとうございます。
日頃よりSHUTLに関心を寄せていただき、心より御礼申し上げます。

2025年のSHUTLは、空間のリニューアルを経て、あらためて「展示とは何か」「体験とは何か」を問い直す一年となりました。
作品をただ“見る”場ではなく、時間を共有し、身体を預け、誰かの思考や記憶と出会う場所として──その可能性を、さまざまな表現者とともに探り続けてきました。

本編では、2025年5月から9月にかけてSHUTLで開催された展示を振り返ります。
後編でも引き続き2025年の展示を振り返りながら、2026年最初の展示をご紹介します。

2025年 展示の振り返り──[1]

タムラサトル 個展「レイという青いワニはまわるのに60秒かかるジョージという白いワニはまわるのに30秒かかる」

(2025.5.15–5.25)

撮影:山根香

SHUTLリニューアルの柿落としとして開催された、現代美術家・タムラサトルによる個展。
本展では、意味や目的性を徹底的に排除するという作家の一貫した姿勢のもと、代表作シリーズ「まわるワニ」による大規模インスタレーション《スピンクロコダイル・ガーデン》が、約3年ぶりに公開されました。

SHUTLの展示空間にあわせて、小さな2体のワニを起点に、約500体におよぶワニたちが配置され、ウレタンやスチロール、ペーパークレイで制作されたワニたちは、電力とモーターによって、ただ機械的に、無目的に回転し続けます。

その反復する運動は空間全体に一定のリズムを生み出し、鑑賞者の知覚や時間感覚に静かな揺らぎをもたらしました。
また、すべてのワニに個別の名前が与えられていることは、均質な造形とは異なる次元で、作品にユーモアや個性を付与しています。
意味を背負わされることなく、ただ回転し続けるワニたちの存在は、鑑賞者の思考を一つの解釈へと収束させることなく、空間との関わり方そのものをひらいていきました。

開放感あるホワイトキューブな空間から再出発するSHUTLにおいて、既成の意味や価値観にとらわれない姿勢を明確に示した本展は、SHUTLの新たなスタートを象徴する展示となりました。

タムラサトル個展「レイという青いワニはまわるのに60秒かかるジョージという白いワニはまわるのに30秒かかる」
【INTERVIEW】タムラサトル 個展「レイという青いワニはまわるのに60秒かかる ジョージという白いワニはまわるのに30秒かかる」

撮影:山根香

撮影:山根香

SHUTLプロデュース 長谷川愛 没入型インスタレーション「PARALLEL TUMMY CLINIC」コラボレーター:山田由梨

(2025.6.6–7.7)

撮影:山根香

長谷川愛による没入型インスタレーション「PARALLEL TUMMY CLINIC」は、延期開催を経て実現した展示であり、会期中すべての回でチケットが完売するなど、SHUTLの展示のなかでも大きな反響を呼びました。
人工子宮の活用が一般化した2070年代の東京を舞台に、鑑賞者が一人ずつ「東銀座のクリニック」を訪れるという設定のもと展開されます。

本作では、鑑賞者は未来の制度と物語のタイムラインに沿って空間を移動しながら、カウンセリングや映像体験を通じて、人工子宮をめぐる選択を“自分ごと”として引き受けていきます。身体、テクノロジー、生殖、ジェンダー、家族といったテーマは、理念や主張としてではなく、極めて私的で静かな内省と決断の連続として立ち上がり、鑑賞者自身の価値観や想像力を揺さぶります。

演劇的アプローチを担った山田由梨とのコラボレーションにより、長谷川愛が描く未来社会像は抽象的な思考実験にとどまらない没入型の体験として完成されました。
鑑賞者自身の身体や想像力を駆使して作品世界を味わう経験は、単に物語を追体験することにとどまらず、未来における選択や判断を自分自身の問題として引き寄せるものでした。
ディストピア的な未来像をなぞるのではなく、「希望としてのテクノロジー」を成立させるための困難さや葛藤そのものを提示する構成は、多くの鑑賞者に深い思考の余韻を残しました。

鑑賞者が展示空間で過ごす時間そのものを作品として成立させる本作は、「体験そのものを展示とする」というSHUTLの方向性を強く印象づける展示となりました。

【延期開催】SHUTLプロデュース 長谷川愛 没入型インスタレーション「PARALLEL TUMMY CLINIC 」コラボレーター:山田由梨
【INTERVIEW】人工子宮が当たり前になったら?──「PARALLEL TUMMY CLINIC」が問いかける “もしも” の世界 〜前編〜
【INTERVIEW】人工子宮が当たり前になったら?──「PARALLEL TUMMY CLINIC」が問いかける “もしも” の世界 〜後編〜
【REVIEW】悲観的ではない未来を思い描く責任について––《PARALLEL TUMMY CLINIC》に寄せて 村上由鶴評
【REVIEW】ディストピアではなく希望を:長谷川愛が描く人工子宮の可能性 荒木夏実評

撮影:山根香

撮影:山根香

夜行 個展「あっちからきました」

(2025.8.15–8.31)

撮影:山根香

夢と現実のあわいから、ふとこちらの世界へ現れたかのような夜行のぬいぐるみたちが、SHUTLの空間を漂う展示。
造形作家・佐藤穂波によるプロジェクト「夜行」は、現実には存在しない生物たちを、まるで“もともとどこかにいた存在”であるかのように立ち上げてきました。
本展のタイトル「あっちからきました」もまた、遠い異世界から来たというより、私たちが普段意識していないすぐ隣の場所から現れた存在であることを示しています。

会場では、ぬいぐるみたちが天井から吊られ、空間の中を泳ぐように配置されました。
棚の上や鞄の中に収まる日常的な姿から解き放たれた彼らは、鑑賞者と同じ空間に身を置き、同じ時間を過ごします。鑑賞者は作品を「見る」だけでなく、その場に居合わせる存在として、ぬいぐるみたちと向き合うことになります。

展示体験は会場内にとどまらず、作品を迎え入れ、日常へと持ち帰ることまで含まれています。夢のような時間が現実へと持ち込まれ、作品とともに生きていく感覚が、残される展示となりました。

夜行個展「あっちからきました」
【INTERVIEW】 夜行個展「あっちからきました」

撮影:山根香

撮影:山根香

FROM THE SNOW MOUNTAIN/CHAPTER B

(2025.9.19–10.5)

撮影:山根香

キャラクター「おしゅし」の作者・やばいちゃん(YBI)による企画展「FROM THE SNOW MOUNTAIN」シリーズの第二章として開催された本展。
おしゅしのすむ世界「すしの国」に存在するとされる未踏の地〈銀シャリ雪山〉と、そこに暮らす「おすしピープル」に焦点を当て、物語や設定を空間全体で立ち上げる展示として構成されました。

銀シャリ雪山は、現実世界で食べられることのなかった米が転生し、降り積もる場所とされています。
雪山に暮らすおすしピープルは、手をかざすことで食べ残された銀シャリに新たな命を吹き込む力を持つ存在ですが、物語の中でその意味や役割は明示されません。鑑賞者は断片的に提示される情報や空間に残された余白を手がかりに、この世界で起きている出来事を想像していくことになります。

本展では、前章から続く物語性を引き継ぎながらも、展示を「埋め尽くす」構成から一歩距離を取り、視線の間や空間の静けさが意識的に用いられました。
孤独を抱えた存在たちをどこか俯瞰するような距離感は、キャラクターと鑑賞者との関係性を変化させ、「誰かの孤独に寄り添う」というやばいちゃんの一貫したテーマを、より静かで持続的な体験として浮かび上がらせています。

物語の続きを予感させながら、想像の余地を大きく残した本展は、SHUTLが扱う「物語としての展示」の可能性をあらためて示す一章となりました。

FROM THE SNOW MOUNTAIN/CHAPTER B
【INTERVIEW】 YBI個展「FROM THE SNOW MOUNTAIN/CHAPTER B」

撮影:山根香

撮影:山根香

2025年、SHUTLの空間には、回転し続けるワニや、あり得る可能性の未来の制度、名もなき生き物たちの気配、語られきらない物語が表現されました。
後編では、引き続き2025年11月・12月に開催された展示を振り返るとともに、
2026年最初の展示をご紹介します。

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