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(REPORT)

【SHUTL EXHIBITIONS 2025:REFLECTIONS】2025年、SHUTLの展示──後編

新年のご挨拶

2026年、あけましておめでとうございます。
日頃よりSHUTLに関心を寄せていただき、心より御礼申し上げます。

前編では、SHUTLのリニューアル以降、空間に立ち現れた数々の展示を通して、
作品を「見る」ことにとどまらない体験のあり方を振り返りました。
2025年5月から9月にかけて開催された展示は、それぞれ異なるかたちで、
鑑賞者とともに時間や思考を共有してきました。

後編では、2025年11月・12月に開催された展示を振り返ります。

最後に、2026年最初の展示についてもご案内します。

2025年 展示の振り返り──[2]

大竹舞人 個展「血と汗」

(2025.10.24–11.9)

撮影:山根香

布を織るという反復的な「労働」を通して、行為そのものをかたちにする大竹舞人の個展。
大竹舞人は、繊維を立体的に編み上げる独自の手法によって、制作の過程に残る身体の痕跡や時間を、作品として空間に立ち上げてきました。展示タイトル「血と汗」は、そうした姿勢を端的に示しています。

本展では、枕やマット、壁といった日常的なモチーフが、布による造形として展示されました。生活に近いかたちを持つこれらの作品は、「鑑賞すべき作品」として距離を取るべきなのか、それとも触れたり踏んだりしてよい対象なのか、鑑賞者の判断を揺さぶります。

触れていいのか、踏んでいいのか──。
作品と身体の距離が曖昧になることで、私たちは無意識のうちに守ってきた〈美術〉と〈日常〉の境界に立ち止まることになります。その迷いや逡巡そのものが、本展の体験として空間に漂っていました。

血と汗を流す行為の痕跡をあらわに残した作品群は、価値や扱い方がどこで決まるのかを静かに問い返します。
労働と制作、日用品と作品、そのあいだに横たわる距離を見つめ直す時間を来場者に残した展示でした。

大竹舞人 個展 「血と汗」
【INTERVIEW】 大竹舞人個展「血と汗」

撮影:山根香

撮影:山根香

Group Exhibition「Fictional Truths」

(2025.11.14–11.30)

撮影:山根香

写実的メディアを用いながらも、主観的なフィルターを通して再構築される現実の断片を提示したグループ展。
鑑賞者は「見ている」と同時に、自らの感覚や経験に照らし合わせながら、現実と虚構の微妙なずれを体験しました。
本展には髙木優希、鈴木雅明、野村絵梨、福濱美志保の4名が参加。各作家は、カメラ、絵画、彫刻などさまざまな手法を通して、私たちが日常的に見ている世界に潜む不思議さや曖昧さを浮かび上がらせました。

髙木優希は、知人の室内をもとに模型を作り、それに光を当てて撮影した写真から油彩画を描く独自のプロセスで、現実と虚構の境界を揺らす作品を提示。
鈴木雅明は、都市や郊外の夜景、限られた光に照らされた机上の静物を通じて、光の持つ感情や記憶の機微を探求しました。
野村絵梨は、生活の痕跡や汚れをデフォルメし、日常の身近な存在に潜む物語をポップな彫刻で表現。
福濱美志保は、小さなモチーフを風景に見立て大画面に描く油彩作品《Grandscape》シリーズを通して、現実には存在しないがどこか見覚えのある世界を描き出しました。

こうして集められた作品群は、鑑賞者に「現実とは何か」「私たちはどのように世界を認識しているのか」という根源的な問いを投げかけます。見る行為そのものが主観的であることを思い起こさせ、日常の隙間に潜む奇妙さや不在の気配に気づかせる体験を本展を通して、生み出しました。

Group Exhibition「Fictional Truths」 2025.11.14 (Fri)

撮影:山根香

撮影:山根香

撮影:山根香

撮影:山根香

キム・ソンへ 個展 「Hand in Hand」

(2025.12.05–12.21)

撮影:山根香

シャンデリアアーティストのキム・ソンへの活動20周年の節目に開かれた本展は、彼女の制作の軌跡と、他者との関係性をめぐる思索が静かに重なり合う空間となりました。
廃棄されたぬいぐるみやおもちゃ、日用品を組み合わせた作品は、一見素朴でありながら、そこに込められた温かさや親密さが鑑賞者の思考を引き込みます。

素材に宿る「拾い上げ、編み直す」という行為は、展示空間全体に新たな物語と倫理を呼び起こし、日常では見過ごされがちなものの価値や存在の意味を改めて考えさせます。

キム・ソンへは本展を通じて、「手と手を取り合う」ことの意義を問いかけ、居場所を失ったものに目を向けることで、自分や他者の存在、そして日々の生活の中で忘れがちなつながりを思索する機会を提示しました。

会場では、スタイリスト・相澤樹、人形作家・粟辻早重、あちゃちゅむデザイナー・しんやまさこ、俳優・富田望生という異分野のコラボレーションも展開。
展示やワークショップを通じて、鑑賞者は作品や空間の構成から発せられるメッセージに触れながら、自身と他者、そして世界との関係性をあらためて思考することができる、年末にふさわしい深みのある体験となりました。

キム・ソンへ 個展 「Hand in Hand」
人形作家、粟辻早重さんの人形を使用したスペシャルクリスマスリースワークショップ
【INTERVIEW】 キム・ソンへ個展 「Hand in Hand」

撮影:山根香

撮影:山根香

前編・後編にわたり、2025年度の展示を振り返ってきました。
2026年もSHUTLは変わらず、様々なジャンルの展示やイベントを発信しつづけます。
本年最初の企画は、西脇衣織の個展「どこかの誰かになる旅」です。

2026年1月 展示のご案内

西脇衣織 個展「どこかの誰かになる旅」

(2026.1.16–1.25)

撮影:山根香

■展示について
西脇は一貫して、古紙や古書といった「誰かの生活の痕跡」が染み込んだ素材を用い、ドローイングとコラージュを駆使したビジュアルアートを制作しています。

特筆すべきは、その素材の収集方法です。作家は父親の仕事の手伝いを通じて、遺品整理に近い作業で「誰かが暮らしていた場所」を訪れます。人が去った後の部屋には、不在であるにもかかわらず、その生活の痕跡や独特の空気感が濃厚に残っています。西脇は、この不思議な「存在の残滓」がもたらす居心地の良さに強く惹かれてきました。

残された生活の断片を、作家自身のフィルターを通して解体し、切り貼り(コラージュ)を重ねて再構築する。この営みを通じ、訪れた人々の人となりや、失われた時間の記憶が浮かび上がります。同時に、その過程で、素材は作家の「勝手な解釈と手」によって形を変え、作品へと昇華していく不可逆な変化の感覚(諸行無常)が生じます。西脇は、この「誰かの時間」が「作家の時間」を経て、新しい存在へと生まれ変わる循環こそが、自身の作品が伝えたい核心であると考えます。

さらに、制作された作品もまた、誰かの手元で時を経て風化し、いずれは忘れられ、何者でもない状態へと戻っていきます。この絶え間ない循環を、作家は「旅のような時間」と捉えます。本展を通じて、作品が観る者それぞれの記憶と邂逅することで、初めてその存在を確かなものとして得られることを期待しています。

■展示概要

会期:2026年1月16日(金)~ 1月25日(日)
時間:13:00~19:00

OPEN : 月・木・金・土・日・祝
CLOSE : 火・水
入場無料
会場:SHUTL

【企画】
主催:松竹株式会社
共催:株式会社マガザン
企画協力:keshik.jp

西脇衣織 個展 「どこかの誰かになる旅」

今年もまた、SHUTLでの展示を通して、皆さまに新たな出会いと体験をお届けできれば幸いです。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

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