(INTERVIEW)
【INTERVIEW】Azami Eimi、須藤はる奈「I’ll be seeing you.」
現代の表現者が日本文化と出会い直し、自らの表現と伝統を結びつけることで、「未来のオーセンティック」を生み出す実験場(ラボ)として立ち上がったSHUTL。2023年10月のオープンから多種多様なアーティスト/クリエイターの方々と、新しい表現やカルチャーを発信しています。
今回は、2024年8月15日(木)〜8月25日(日)の期間に「I’ll be seeing you.」を開催する、Azami Eimiさん、須藤はる奈さん、 SHUTLの黒田純平さんにメールインタビューを行い、今回の展覧会について、お話を伺いました。
インタビュアー:株式会社マガザン武田真彦
「I”ll be seeing you.」のコンセプトについて
まず、本展のコンセプトや経緯について、企画を担当されたSHUTLの黒田さんから教えて下さい。
SHUTL 黒田:本展「I”ll be seeing you.」は、「長い期間会えていない人を思い出す」をテーマに、ポートレート作品を中心に制作するアーティスト二人の展覧会です。
この展示のアイディアにもなっている映画「君に読む物語」は2005年に公開され、私自身は、当時TVの映画枠で鑑賞したのが初めてでしたね。
映画は、認知症を患い過去を思い出せずにいる老婦人の元に、足繁く通う老人がとある若い男女の物語を読み聞かせながら当時の二人の思い出を追体験するお話です。展示タイトルも、劇中歌に使用されているビリー・ホリデイの曲のタイトルから引用しています。
劇中では、ヒロインが将来を案じる両親に男性との交際を阻まれ、二人の仲は引き裂かれてしまいます。 男性は365日毎日手紙に想いを託しますが、一通の返事もないままやがて第二次世界大戦が始まります。
この、手紙に想いを託す行為が、コロナ禍でなかなか会うことができなかった時間に、SNSなどを通じてコミュニケーションを図る様子と重なりました。
私達は、過去の出来事を風化させないために、様々なきっかけを残しながら生きていると思っております。展覧会の鑑賞にもそれはあると思っています。
そんな、長い間忘れていたことや、懐かしくなる出来事などを思い出して、「そういえば、あの人はなにしているんだろう。」と思いを馳せていただけたら素敵な鑑賞体験になるのではないかと考え企画しました。
本展のメインビジュアル
ありがとうございます。それでは、今回、作品を展示するアーティストのお二人にも展覧会についてお話を伺えればと想います。それぞれ今回の展覧会に参加していかがでしたか?また作品についても少しお話を聞かせていただけますと幸いです。
Azami Eimi:Azami Eimiです。今回の展示のコンセプトを聞いて私なりの解釈で「過去の自分(と身の回りの人・もの)」というテーマに行き着きました。
私は幼少期、窓の外の森林と夜空に向かって自分自身に話すように悩み相談をしていた記憶があります。
一番身近でありながら一番遠くてわからない存在になってしまったもう1人の自分は今頃どうしているだろうかとふと思い出すことがあります。
三つ編みの一つ一つや球のモチーフは記憶が詰まったタイムカプセルのようなイメージ。
思い出の品や好きなものを絵の中に散りばめました。
特に髪の毛、女の子の瞳や口など、線をひいているときは最も心が落ち着くひと時で、蛍光ピンクやオレンジ色は今も変わらず気分が盛り上がる色です。
自分にとって絵を描くことはいつでも童心に戻れ、自分を癒す行為だなと思っています。
当時の自分自身と対話していた感覚に似ているのかもしれません。
Be with. © Azami Eimi
須藤はる奈:須藤はる奈です。この度はAzami Eimiさんとの二人展ということで大変光栄に思っております。
お話をいただき、テーマを受け自分なりにどう解釈していこうかと過ごしていたころ、ある場所で見つけた言葉にはっとしました。私はいつもこういう気持ちで絵を描いているのだと気づかされたのです。
“I don’t even know where she is at now.”
「彼女が今どこにいるのかさえ私は知りません」
「彼女」とは子供のころの自分のようでもあるし、もう会うことのなくなってしまった古い友人のようでもあります。私には昔から、お花が枯れてしまったような喪失感があり、それを絵に描くことで癒しているのかもしれません。この手で救えなかったものがあって、そのことをずっと許せないでいるような。離ればなれになってしまった自分自身や、他者に対しての断ち切れない思いに葛藤してきました。
でも制作を進めるうちに、ある思いが芽生えてきました。世界はどんなひどいことも美しいことも起こりうるが、どの世界を信じるかどうかを、自分で選ぶことができるのだと。
この言葉に、いま私が続きを付け足すなら「それでも彼女が幸せに生きていることを信じます」になると思います。
Nerine ©Haruna Sudo
ありがとうございます!それでは、最後に黒田さんから本展の見どころを教えて下さい。
SHUTL 黒田: やはり、コンセプトから着想して新作を制作していただいているので、二人の解釈をぜひ読み解いてほしいですね。
展覧会を作る上でも、お二人の考えを聞いて、「思い出す」行為に基づく考え方
は自分以外の視点ではまったく違うことを改めて実感しました。
2つのカプセルがあるSHUTLの空間の中で両者の作品を集中して鑑賞できるように色々工夫をするのでそこも踏まえ、楽しんでいただければと思います。
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須藤はる奈
主にモノクロームの人物像を描く。
これまで他者視点で多く語られてきた「女の子」のアイコンを自らの文脈や解釈で纏う人たちが、その上で獲得していくであろう自由について考え制作。
展示のほか、ショップとのコラボレーションでアイテムを展開する。書籍の装画でも活躍中。
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