(INTERVIEW)
【INTERVIEW】ビジュアルアーティスト・山根香による、SHUTLのコンセプトムービー秘話
2022年に解体された中銀カプセルタワービルのカプセルの魅力を再発見し、今の時代に即した文化を発信していく新たなアート&カルチャースペース「SHUTL(シャトル)」。建築家・黒川紀章が設計した新陳代謝をコンセプトとしたカプセル2基とそれらを格納する新たな空間を舞台に、日本文化そのものの新陳代謝の展開を目的とし、現代の表現者が日本文化と出会い直し、自らの表現と伝統を結びつけることで、「未来のオーセンティック」を生み出す実験場(ラボ)として2023年10月から動き出しています。
今回は、SHUTLプロジェクト始動時から長く関わっていただいているビジュアルアーティスト・山根香さんに、撮影・制作いただいたSHUTLコンセプトムービーや、継続して撮影いただいている数々の展覧会アーカイブ写真を振り返りながら、SHUTLプロジェクトへの想いを伺いました。
インタビュー:武田 真彦(株式会社マガザン/SHUTLディレクター/サウンドデザイナー)、小倉 ちあき
ライティング:小倉 ちあき
山根さんの制作活動
SHUTLのコンセプトムービーを手掛けていただいた、山根香さん。改めて自己紹介をお願いいたします。
山根:こんにちは、山根香です。2019年に京都市立芸術大学を卒業しました。Qe to Hare Inc. のアートディレクター兼、ビジュアルアーティストとしての仕事をしています。主に、自社事業のサウナのホテル、カフェなどのビジュアルをディレクションから撮影まで行っています。アートにまつわる仕事も多く、2022年には京都大学の異能育成プログラムにてニューヨークのギャラリーでの展示物を制作したりもしました。
最近では、PRADA×WIRED×谷尻誠 やVOGUEの「In The BAG」シリーズなどの映像ディレクションに携わっています。
大学卒業後からは個人としても活動しており、2019年の大阪万博50周年記念展での「蓮沼執太 HIBIKI AIDA」から始まり、2020年の新建築×砂木「小豆島ハウスプロジェクト」映像制作、TOKYO DESIGN STUDIO New Balance NOT FAR #07 (取材撮影/裏表紙)、2024年には現代アーティスト田中功起さんと映像作品の撮影など、アート、建築、コミュニティーなどを軸にさまざまなプロジェクト映像の制作や撮影を行っています。
新建築×砂木「小豆島ハウスプロジェクト」
アーティスト活動としては最近できていないのですが、日々の生活の記憶と記録、人々の生きる軌跡など、それらを写真や映像で残していくこと、表現することに興味がありますね。
net (polyhedron) | 2020 Kyoto
Look Up In | 2021 Osaka
SHUTLができるまで
SHUTLが生まれる前に、中銀カプセルタワービルのカプセルや建設前のスペース、そしてカプセルが東銀座に移動するところを撮影いただきました。SHUTLがスペースとして立ち上がっていく 過程を近くで見ていただきましたが、どのように感じておられましたか?
山根:SHUTLが立ち上がっていく過程は、本当に面白かったです。特に、中銀カプセルタワービルのカプセルが倉庫に並んでいた光景は圧巻でした。日本建築の歴史の一部を見られて、とても興奮したのを覚えています。
倉庫のカプセルやトラックで運搬されるカプセル、そして建物に収まったカプセルと、同じ物体なのにそれぞれ体感するスケールが全然違うので、かなり面白かったです。この感覚は、近くで見続けてきたからこその特権かなと思います(笑)。
序盤に建設予定地の空き地を見せていただいたときは、大通りから一本入った裏のスペースだったので、東劇ビルの隣ではあるもののカルチャーの匂いが薄く、果たしてどんな場所になるのか当初は全然想像がついてなかったのが本音です。
実際にオープンしてから企画毎に関わらせていただいて、スペースの持つ力といいますか、場が開くことでそのエリアが生き生きしていく様子を肌で感じることができました。ガラス張りなのもあって道ゆく人がSHUTLの中を興味深そうに覗いていく様子や、普段このエリアに来ない人がSHUTLを通して混ざり合う感じに魅力を感じています。
SHUTLの誕生
そしてSHUTLの建物が姿を現し、カプセルをインストール、アートスペースとして完成しました。SHUTLのスペースとオープニングイベント風景を撮影いただき、それらをまとめたコンセプトムービーを制作いただきました。このムービー制作で意識されたことがあればお聞かせください。
山根:ムービー制作については、アーカイブしてきた映像を使って制作するという流れだったので、どうやってこれから始まるスペースの魅力を伝えることができるのか?に気を使いました。
ただのアーカイブ映像にならないように、見た人がワクワクしてもらえるような、どんな場所でどんな雰囲気なのかを一目で理解してもらえるように意識しました。
カプセルを移動させる現場は本当に大変だったのですが、そればかり映像で見せても伝わらないと思い、秒数こそ少ないですがあの大きなカプセルが2つも移動してきたんだ!ということを強く印象づけたくて、臨場感のあるカットを多めに構成しています。
楽曲については、プロジェクトの立ち上げから関わってくださっているサウンドデザイナーの武田真彦さんから提供いただきました。SHUTLのコンセプトイメージをしっかり理解してもらっているので、楽曲のテンポに合わせた編集になりました。私一人で制作するよりも想像できなかった部分を補ってもらえたのは新鮮でした。
なかでもムービーの最後に入れたロゴに合わせたボイスは、黒川紀章さんの建築論が詰まった「MUSIC FOR LIVING SPACE」の宇宙人的な声を参考にして制作してもらったものです。中銀カプセルタワービルが建った時代の空気感と、令和から始まるSHUTLのコンセプトが深く混ざり合うといいなと思っています。
実験を続けるSHUTL
現在も引き続き、SHUTLで開催している展覧会・イベントを撮影いただいています。「伝統と現代の新たな接続方法を生み出す実験場」として、今後SHUTLに期待することや実験してほしいことはありますか?
山根:オープニング展示企画シリーズは、個人的にかなり面白かったです。特に、キュレーターの黒田さんが様々なアーティストをコラボさせているのが、SHUTLの『伝統と現代の新たな接続方法を生み出す実験場』としてちゃんと応えているなぁと感じました。このシリーズ企画自体をぜひシリーズ化してほしいです(笑)。
カルチャーと一口に言ってもあらゆる分野(芸術、建築、音楽、文学、etc...)とたくさん存在してますが、どれも抽象化していくと繋がってくる概念みたいなのがあると思うんですよね。
そうしたものを掬い上げて今の価値観から生まれる創造性みたいなところを、SHUTLから発信してもらえると嬉しいな〜と期待しています!
伝統のメタボリズム〜言葉と文字〜
伝統のメタボリズム〜様式の変容〜
伝統のメタボリズム〜見立て〜
「新工芸舎新作予約販売会2024夏」
オキモノ展示会SATELLITE
「FROM THE SNOW MOUNTAIN」
Azami Eimi × 須藤はる奈 2人展「I'll be seeing you.」
プリミティブ・コミュニケーション β
(PROFILE)
山根 香
1994年大阪生まれ。2019年京都市立芸術大学卒業。Qe to Hare Inc. 所属。
写真、映像の表現を中心に、日々の生活の記憶と記録をテーマに制作を行う一方で、建築、アート、コミュニティーなどを軸とした様々なタイプのプロジェクト映像を制作、写真の撮影を行う。
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SHUTLは現代の表現者が、伝統と出会い直し、時間を超えたコラボレーションを行うことで新たな表現方法を模索する創造活動の実験場です。スペース利用から、メディアへの掲載、コラボレーションまで、どうぞお気軽にお問い合わせください。