(INTERVIEW)
【INTERVIEW】株式会社 Acxyz Creativ「SIGN展」
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株式会社Acxyz Creativによる展覧会「SIGN展」が、2024年11月1日〜11日にSHUTLにて開催されました。長年、大衆娯楽のための立体造形制作を行ってきた株式会社Acxyz Creativ。大きな反響を呼んだ本展を振り返りながら、これまでの取組みやSHUTLでの展示に込めた想いについて伺います。
インタビュー:黒澤津 勝大(株式会社Acxyz Creativ)
ライティング:小倉 ちあき
株式会社Acxyz Creativについて
Acxyz Creativさんは、「フィギュア原型師」としてのお仕事の中でさまざまなフィギュアを手がけておられますね。「フィギュア原型師」というお仕事について教えてください。
黒澤津 勝大さん(以下、黒澤津):フィギュア原型師とは、主にアニメなどのキャラクターを縮小してフィギュア化した「商業フィギュア」の原型を作る人を指します。以前は粘土を使った手作業が主流でしたが、現在では3DCGを用いることが多くなっています。3DCGでデータを作成し、それを3Dプリンターで出力して実物の原型にしていきます。
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これまで会社として関わってきた案件や制作物について、いくつかお聞きしてもよろしいでしょうか?
黒澤津:グッドスマイルカンパニーのPOP UP PARADEというシリーズのフィギュアや、コトブキヤから出ているフィギュアなどの原型を、いくつか担当させて頂いております。
他にもTVCMや広告、イベント等で使用する造形物のデザインや原型などを手がけております。有名な作家さんの作品のお手伝いをさせていただくこともあります。
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11月に開催された展示「SIGN展」について
関係のある多くの作家さんとのコラボ作品が並ぶ、圧巻の風景でした!展示が終わってみての感想をお聞かせください。
黒澤津:一度にこれほど多くの作家さんとコラボすることは初めてでしたが、こちらの表現したいものを皆さんがしっかり汲み取って考えてくれて、大変良い作品が揃いました。それぞれが各方面でご活躍されている方々だったので、表現の幅がかなり広がり、コラボでなければ作れない作品になったと思っています。
他の作品に関しても初めて取り組んだ表現方法が多かったのですが、チャレンジしてみると思っていた以上に上手くまとまりました。限界を突破した気がします(笑)
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SHUTLに関して
作家さんとはどのように、ものづくりを進めていかれたのでしょうか?
黒澤津:今回はこちらで用意したテーマを元に、作家さんごとにそれぞれの技術を生かした表現を考えてもらい、方向性がブレないよう話し合いながら進めていきました。
本展のための新作展示もありましたが、どのように展示内容を構成されていったのですか?
黒澤津:展覧会を実施することを決めたときは、2つの目的がありました。
1つ目は、私たちが何を作れるのかを伝える場にしたいということです。私たちは10年以上にわたって商業美術に携わり、多くの技術を培ってきたものの、裏方であるため名前が表に出る機会が少なく、制作物をお客様に直接見てもらう機会がほとんどありませんでした。そのため、初の試みをおこないたいという目的がありました。
2つ目は、作品や作家を主体とする展示を行いたいという思いです。商業美術や大衆娯楽に関わる中で、自分が作るものが「消費行動を促すためだけのもの」にとどまっているように感じ、どれだけ思いやこだわりを込めても、消費者には表面的にしか見られていないのではいか?という感覚がありました。これは、主体が「商業」であり、「作品」や「作家」が中心になっていないためだと考え、今回の企画に至りました。
単に作品を並べるだけでは統一感のない展示になりそうだったため、大きなテーマを設けたいと思い、ちょうどそのころに関心を持っていた「シミュラークル(現実を別の何かで置き換えたもの)」という概念に焦点を当てることにしました。これはフランスの哲学者であるジャン・ボードリヤールの著作に出てくる思想です。書籍を読み進める中で共感する部分が多く、自分たちの立場からそのテーマを提示してみたいと考え、展示構成を組み立てました。
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黒澤津:当初は弊社スタッフだけで企画を進める予定でしたが、同じ商業美術に携わる異なるジャンルの方やアート分野で活躍されている方とのコラボがあると、より視野が広がると考え、お声掛けしました。また、以前から一緒に何かを作りたいと話していた友人も招いて行いました。
大衆娯楽から、アート文脈まで広く捉える試みでしたが、こだわった点はどんなところでしょう?
黒澤津:日頃から大衆娯楽とアートの間に隔たりを感じており、ちょうどその中間を目指したいと考えていました。普段はフィギュアやプラモデルなど、ホビー好きの方々に作品を見ていただく機会が多いのですが、今回はホビーイベントとは異なる見せ方で楽しんでもらいたいという思いがありました。一方で、アート分野の方々に対しては、私たちの活動を知ってもらいたいという目的もありました。
今回の展示は実験的な要素が多く、どのような展示になるのか未知数だったこともあり、「ただ技術を見せているだけではなく、もう一歩踏み込んだ考えがあるんだな」と感じてもらえることを目指していました。
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やってみてよかったこと、発見があったことなどについて教えてください。
黒澤津:初めての展覧会でしたが、コンセプトから作品制作、展示構成まで妥協せずに完成させることができたことで、会社の方向性の提示やブランディングにもつながったと感じています。
展示作品は映像や平面、ぬいぐるみなど、仕事でも個人制作でもあまり披露する機会のなかった技術で表現した作品が多かったのですが、それが想像以上に好評でした。
作家それぞれに対しても、普段の仕事では発揮しきれていない、眠っている能力があると気づかされました。
SHUTLについて
SHUTL空間についての感想をお聞かせください。
黒澤津:すぐには名案が思いつきませんでしたが、一つの会場でさまざまな見せ方ができる予感を感じ、工夫次第で面白い展示が実現できると思いました。SHUTLが今後どのように展開されていくのか、個人的にとても楽しみにしています。
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展示をする上で、SHUTL空間をどう生かしましたか?
黒澤津:展示構成を章立てにし、世界観を共有できる作品を同じカプセルにまとめたり、カプセルの窓から覗いて鑑賞すること自体に意味を持たせたりすることで、上手く活用できたかなと思っています。
カプセルという存在があることで、それを前提とした展示構成や作品を考えることができたことも、私たちにとってはやりやすかったかもしれません。
今後SHUTLで実践してみたいこと、チャレンジしてみたいアイデアなどありますでしょうか?
黒澤津:2基のカプセルを対比で見せるコントラストの強い展示や、イマーシブな空間演出も楽しそうですね。時間や空間の概念を超越できそうな気がします。
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(PROFILE)
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黒澤津 勝大
株式会社Acxyz Creativ
2011年 特殊メイク・造形制作会社に入社。
映画やTV、広告などにおける特殊メイク、造形制作に携わる。
2016年頃よりデジタル原型やデザイン業務に完全移行し現在に至る。
2021年 に退職
2022年 株式会社 Acxyz Creativ設立
商業フィギュアの原型を中心に、イベントや広告での立体造形のデザインや原型などを行いながら、在籍スタッフがそれぞれ作家としても活動している。
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