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(INTERVIEW)

【INTERVIEW】 YBI個展「FROM THE SNOW MOUNTAIN/CHAPTER B」

いよいよ今週末開催「FROM THE SNOW MOUNTAIN/CHAPTER B」。
昨年につづく、シリーズ個展。今回の展示の注目すべきポイントを作家のYBIさんにお伺いしました。

インタビュー:黒田純平(株式会社マガザン)

シリーズの展開について

前回の「FROM THE SNOW MOUNTAIN」(以下、FTSM)と比べて、今回「CHAPTER B」ではご自身の中でどんな進化や変化を感じていますか?

YBI:前回に引き続き立体作品を中心に制作していますが、少しずつ技術向上ができているのではないかと思います。生物っぽさが増したような。

展示方法についてはこれまでの「空間を埋めていく」ことから少し離れようと試みているので、それが観る側の目に進化として映れば嬉しいです。

FTSMは元々おしゅしの世界におけるおまけ的な立ち位置だったのですが、どんどん独り歩きして今やおしゅしの世界よりも深掘りしている状態です。

制作を続けている時に、いいものができたかも、と思える時はアイデアを制御していないことが多くて、この展示もその状態で走れているなと思います。

前回のFTSMのキービジュアル

2024年開催のFTSM展示風景 / 撮影:山根香

キャラクターと世界観

「おすしピープル」や「銀シャリ雪山」といったキャラクターには、どんどん新しい側面が加わっているように見えます。今回特に強調したかったポイントはどこでしょうか?

YBI:おしゅしの世界から見たおすしピープルを想像しながら見に来てくださる方は面食らうのではないかと思います。ファンシーで平和な世界で、おすしピープルは一人だけいるちょっと不思議な存在…くらいのものだったと思います。

寿司が外界と接触する時、それは人間との関わりのみじゃなかったのか?このフィールド上に「それ以外の社会」があるなんて誰も思ってなかったのではないでしょうか。

そういう「一歩踏み込むと全く違う世界が存在する」ということは普遍的であって、ファンタジーに限らず今この世界にも存在しています。私自身、制作的物心がついて以降そういった創作を好んで見て来ましたし、当然現実ベースであると思っています。

この展示上の世界の登場人物たちにとって、何が真実であるかを色々考えてみてほしいです。

2024年開催のFTSM展示風景 / 撮影:山根香

「食べ残しの銀シャリに命を吹き込む」というモチーフはユーモラスでもあり寓話的でもありますが、そこに込めた象徴的な意味をお聞かせください。

YBI:八百万的思想が私の中に根付いていることが重要で、特に幼少期に「米の一粒一粒に神様が宿っているから、ご飯は綺麗に食べ切ること」と教わったことがこのモチーフに強く影響しています。

でもいくら私が綺麗に食べ切ろうと、この世に残されたご飯粒全てを救い出すことはできない、仕方ないと思いつつ、創作していく中で無意識に救いだそうとしているのだと思います。

FTSMのシナリオの中でこれが「ご飯粒」として出てくるかは別ですが。

テーマ「孤独への寄り添い」

以前のインタビューでも語られていた「孤独に寄り添う」というテーマは、今回どのように空間やキャラクターに表れていますか?

YBI:まだ「CHAPTER B」の段階で読み取っていただくことは難しいのかもしれませんが、この登場人物全てが個々の孤独を持っています。これまでの経験では、キャラクターや展示物たちが観客に対して寄り添いを示していくことが多かったのですが、今回は逆です。

孤独な存在を俯瞰して見ることが視覚的に現れた空間になっていると思います。

YBIさんご自身が考える「孤独に寄り添う」とは、日常的な感覚でいうとどんな行為や態度に近いと思いますか?

YBI:自分とは別の誰かが「孤独である」と発信することが寄り添いになる、ということに思い巡らせることがとても多いです。

本来人は孤独なものとして、どこか受け入れ諦めながら過ごしてきたと思います。SNSの台頭によってあまりにも多くの人が見えすぎるようになってしまい、孤独を孤独として認識できず、誰かに受け入れて欲しい気持ちを諦めることが難しくなっている。
孤独の寛解ができなくなっている。
そういう人にキャラクターができることと言えば「その存在をもって麻痺させること」だと思います。一時的な措置です。でも発信し続けて行けば一時的じゃなくなる。

だから私にできる孤独への寄り添いは、制作して発信することです。

2024年開催のFTSM展示風景 / 撮影:山根香

制作とプロセス

制作の過程で「これは自分でも新しい挑戦だった」と感じた部分はありますか?

YBI:ストーリーを持続させることと、空間の余白をきちんと利用することです。

展示自体にストーリーを持たせることは過去もありましたが、展示と展示を跨いで話を続けることは初めてです。

前回から引き続いてご覧いただく方(もちろん、Bが初見の方にも楽しんでいただけるような工夫もしましたが)にとって「これは…」と思っていただけたら…伝わるといいなと思います。

空間と体験

以前とは違うSHUTLの空間を使う上で、今回は特にどんな演出や仕掛けを意識されましたか?

YBI:大きな空間にFTSMの空気をどう充満させるか悩みどころでした。

余白恐怖症なところがあるので、これまでの展示は「何もない場所潰し」をしているのかという程、隙あらば作っては貼って置いて…を繰り返して来ました。

今回は真逆で、作品を見ることよりも、余白(ストーリー的にも、観客の精神的にも)に対して想像をめぐらせて貰えるようにと制作しました。

今後の展望

「FROM THE SNOW MOUNTAIN」シリーズは今回で第二部という扱いですが、第三部もあるということでしょうか?少しだけ今後のシリーズの展望もお聞かせいただければ幸いです。

YBI:もちろんCHAPTER Cも予定しています。
Aでは、伯爵の城に来たおすしピープル。
Bでは、おすしピープルが友達になった手がドリルの少年と、伯爵のこと。
Cでは、城の秘密と、おすしピープルがなぜおすしピープルとして雪山にいるのか。

以上を予定しています。

A(FTSM初回)を開催した際に、回数を重ねるごとに謎が少しずつ紐解かれていく、とお話させていただきました。

Bで結構開示したつもりですが、お客様からすれば謎の部分が多い、むしろ増えたと感じる方もいるかもしれません。

Cで全て放出しますので、それまで色々な考察をして待っていてください。

2024年開催のFTSM展示風景 / 撮影:山根香

最後に

最後に、今回の展示にご来場予定の方々へ一言メッセージをお願いいたします。

YBI:今回は、伯爵城の晩餐に皆様をご招待します。
皆様の席ももちろんご用意いたしますのでぜひお越しください。

(PROFILE)

YBI

(株)YETI VACATIONS代表

2013年より寿司のキャラクター「おしゅし」の執筆をはじめ、絵画、漫画、立体造形、キャラクターデザイン・開発、LINEスタンプ制作など表現方法を限定せず発信しています。 KADOKAWAより「おしゅしだよ」「おしゅしだよ どうもね」「おしゅしだよ いきゅよ」を出版、2023年におしゅしは10周年を迎えました。 作品を通して「誰かの孤独に寄り添う」ことを基本理念として活動しています。

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