(INTERVIEW)
【INTERVIEW】Local Visions×SHUTL「LAF」鼎談 後編

2025年9月13日(土)、東銀座のアートスペース SHUTL にて、2周年を記念した特別企画イベント「LAF(Launching Authentic Futures)」を開催しました。
本記事では、SHUTLのコンセプトである” Launching Authentic Futures” をテーマに、音楽と映像、自由な空間演出が交わる体験を一緒に作り上げた音楽レーベルLocal Visionsのお二人とディレクターの黒田の対談記事を収録しました。
ライター / インタビュアー
Kotetsu Shoichiro
インタビューイ
sute_aca(Local Visions)
Tsudio Studio (Local Visions)
黒田純平(SHUTL)
【後編・イベントの裏側、東銀座という街について、今後の展望】
クラブやライブハウスではないSHUTLで音楽のイベントを行うにあたって、懸念はありましたか?
黒田:確かに、弾き語りやDJなら過去にもありましたが、大々的な音楽イベントは「LAF」が初めてでした。ただ、関係者はいつもどんなイベントにも柔軟で、企画サイドに対して非常に理解のある体制だと思います。これまでSHUTLで行われたいろんなイベントに関しても、ストップをかけられたことは一度もありません。
なので今回の「LAF」に関しても、音漏れや近隣への配慮といった面はもちろん考慮しつつ「とりあえず、やってみよう」という姿勢でした。
Tsudio:黒田さんはイベント中も何度も外に出て、音量を確認していましたよね。単に空気を読んで前もって自重するのではなく「どこまでやっていいのか?」を探りつつイベントを進めていくのは、こう言っていいかはわかりませんが、それはそれで面白かったですね(笑)。
ただ、もともと、低音が無くても成立するような音楽性のアーティストをある程度選んだ部分もありますし、クラブやライブハウスでないなら、それはそれで、その環境に合わせて音楽をすればいいとも思います。周りと調和できる、その場所ならではの音楽があるはずなので。
それと、課題というほどではありませんが、お客さんの中では、喋りたい人と、集中して聴きたい人とが別れる場面もありました。もちろん「LAF」には社交の一面もあるので、喋りたいお客さんは喋って欲しい。ただ「じっくり聴きたい」というお客さんの気持ちもわかるし「場を作る」ということを今一度考えさせられる局面でしたね。
黒田:アンビエント寄りのパフォーマンスだと、小さい声で話しても、他の人の耳に入りますよね。お客さんがどう楽しむか、ということも含めて場の構築なんだと思いましたね。ただ、それはそれで議論のきっかけというか、ポジティブなものとして捉えています。
Local Visionsのイベントに来るお客さんは、真剣に音楽を聴きに来る人が多いと思います。「普段イベントはそんなに行かないけど、Local Visionsがやるなら」という人も少なくないでしょうね。「LAF」で初めて東銀座に来た方もいるかと思います。
自分もまさにそうでした。そもそも、東銀座は街としてどういう所なんでしょう?
黒田:東銀座というのは駅名であって、地名としては存在しないんですよ。SHUTLも、住所としては築地になります。東銀座は松竹株式会社の本社である東劇ビルを始め、歌舞伎座もあり、いわば松竹の拠点となる場所です。その一帯は歴史を遡るとかつては木挽町と呼ばれていて、三大歌舞伎の劇場が集結した町で、活版印刷の発祥の地(※諸説あり)でもあったそうです。
歴史的に、カルチャーの発信地と言えるエリアなんですね。
黒田:はい。元来、文化的なものと親和性が高い街だと思います。なので働く人、住んでいる人、遊びに来る人──誰にとっても東銀座が文化的なエリアとして楽しめる街になるのは、僕としてもかなり理想的なビジョンですね。
美味しい飲食店もいっぱいありますし、SHUTLの周りでお客さんがどういう風に動くかは興味深いですね。あのあたりはすしざんまいの本店や、雑誌『POPEYE』『BRUTUS』のマガジンハウスのオフィスなんかもあって面白いですよ。
そんな東銀座に、SHUTLという場があり、そこで信頼のおけるレーベルであるLocal Visionsのイベントを企画する。そしてLocal Visionsにとっても、SHUTLを通じて、理想的なイベントができて、新たな人の縁ができれば、双方にとって良い流れになるんじゃないかと思います。
東銀座という、カルチャーとしての色付けがまだあまり無い街だからこそ、どこにも属していない、自由でフラットなイベントができそうですね。
黒田:どこにも属していない、という感覚は大事だと思っていますね。この仕事を続けていく上で、狭い業界の中でも、常に適切な距離感を保ちたいと常に思っています。もちろん仕事をする上での仲間は大事ですが、線引きも必要だと思っています。その点、Local Visionsは信頼関係もありつつ、すごく距離感がちょうどいい繋がりだと思いますね。
アーティストや作品が世の中全体で増えて、コンテンツとして消費される速度もどんどん上がっていっていると思います。SHUTLは一過性のものではなく、新しく面白い文化の入り口として、継続していきたいと考えています。
sute_aca:確かにLocal Visionsは、特定のスタイルや形態に属さないようにしていますね。中間でありたい、といつも考えています。そういった点では、SHUTLの方針と親和性があるかも知れません。
Tsudio:僕もsute_acaさんも、イベントを企画する上で、クラブやライブハウスでもやらせてもらいますけど、それ以外の場所でもできないかと以前から考えていたんです。ただ、それができる店や場所は、なかなか無い。だからSHUTLでの「LAF」は、ひとつ夢がかなった、理想的なイベントができたと思います。「こういう空間を、Local Visionsのアーティストたちと作りたかったんだ」と思いましたね。
そういった斬新なイベントが、老舗のイメージが強い松竹の下で行われているのも、ユニークですよね。
黒田:自分としては「LAF」は継続してずっと続けたいイベントですし、それは松竹も前向きに考えてくれていると思います。オフィス街の硬いイメージのある東銀座が、もっと文化的なものがラフに楽しめる街になれば面白いし、SHUTLがそのきっかけになれば嬉しいです。
sute_aca:Local Visionsとしても、SHUTLでのイベントはまたやりたいですね。
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