(INTERVIEW)
【INTERVIEW】SHUTLはどこへ向かうのか?東銀座に息づくギャラリーの現在地と、その先にある風景

インタビュアー:武田 真彦(株式会社マガザン)
インタビュイー:鈴木 太一郎(松竹株式会社)・ 黒田 純平(株式会社マガザン)
ライティング:小倉 ちあき
――まずはお二人の役割からお聞かせください。
鈴木太一郎(以降、鈴木)さん:松竹株式会社で不動産部門を担当しています。SHUTLプロジェクトには立ち上げ当初から関わって、全体の計画と方向性を統括しています。
黒田 純平(以降、黒田)さん:株式会社マガザンに所属し、SHUTLのアートディレクター兼キュレーターを務めています。展覧会の企画・運営や、それを通してアーティストとの伴走的な関係づくりを担っています。

鈴木:SHUTLの特徴であった中銀タワービルのカプセルがなくなり、空間の構成が変わってしまったことは大きな転機でしたが、それを“終わり”とは捉えませんでした。展示内容の幅は逆に広がったと思っています。例えば大きな作品が置けるようになったり、柱や可動式の壁を使った展示ができるようになったり、建築的な工夫もできるようになったのは、ある意味チャンスでした。
むしろ「場所性」に依存しすぎず、企画の自由度を再考するきっかけと捉えて、展示手法の建築的な工夫を凝らすことで、より柔軟で創造的な空間活用が可能になったと考えています。
黒田:僕は最初、ショックのほうが大きかったです。企画していた展示の準備がちょうど大詰めだったので、アーティストたちに状況をどう説明するか、心が痛みました。ただ連絡を取ったアーティストの多くが、「それなら次の形を一緒に考えよう」と前向きに受け止めてくれたのが本当に心強くて。そこから僕自身も切り替えられました。
SHUTLの在り方が、“空間”重視から“関係性”重視へと重心を移していく瞬間だったと感じています。
――再オープンしてから、展示の様子や来場者の反応で変化を感じることはありましたか?
黒田:空間が拡張されたことで、よりスケールの大きな作品が扱えるようになりました。たとえば、REOPENのこけら落としの展覧会では、巨大なワニのオブジェを展示していて、これが通りがかる人たちの注目を集めています。ガラス張りの壁越しに「なにこれ!?」って感じで写真を撮る人もたくさんいて。
鈴木:たしかに、あの空間に突然ワニがいたら誰でも気になりますよね(笑)
以前は空間的に限られた構造前提での展示でしたが、今は空間そのものがキャンバスになる。プロジェクションマッピングを使った映像展示や、移動式の壁を使って“変化する空間”にするというのも、アリだと思います。

――アーティストの反応にも、何か変化はありましたか?
黒田:非常にポジティブですね。カプセルがなくなったことで、展示空間に高さも広さもできて、立体作品や動く作品(キネティックアート)も扱いやすくなりました。あと、音楽イベントの打診も増えていて、「ここって音出せるんですか?」と相談されることもあります。「今までできなかった挑戦ができる」と、多くの作家が空間特性を読み解きながら新しい表現に取り組んでいます。音とアートの融合も、これからは面白くなりそうです。
――なるほど。作品だけではなく、「場づくり」もどんどん実験的になっていきそうですね。
鈴木:そうなんです。それに、東銀座という立地も強みです。4つの駅から徒歩10分以内で来られて、しかもガラス張りなので、通りから展示がよく見える。この“開かれたギャラリー”としての希少性とポテンシャルを、もっと活かしていきたいです。
黒田:歌舞伎座を中心とする文化の歴史の厚みがある一方で、現代的な表現が介入する余地があるという点で、今の東銀座は非常に魅力的です。SHUTLは“展示施設”から“都市に開かれたメディア”へと変容しつつあるのかもしれません。今回のREOPENを機に、SHUTLがますます開かれた場となり、東銀座という都市空間との接点が、よりダイレクトになればと思います。
――これからのSHUTLに対する展望をお聞かせください。
鈴木:文化や表現を「再発見」する場所でありたいですね。現代アートだけじゃなく、計画当初のコンセプトにある通り、日本の伝統や生活の中にある価値を掘り起こして、今の表現につなげていく。たとえば、漆や和紙、盆栽のようなテーマを現代のクリエイターがどう再構築するか。そんな展示も企画してみたいですね。

黒田:僕個人の話でいうと、今、日本が築いてきたキャラクター文化への接続に可能性を感じています。たとえば歌舞伎の演目と現代アニメーションの文脈を重ね合わせることで、「物語と身体性」を現代的に再編集するような企画ができるかもしれません。
SHUTLがいろんな分野の研究者やアーティストと連携して、「日本文化の再解釈」ができる場になっていけたらと思っています。
――SHUTLは、まちに開かれた「文化にまつわる実験場」として、より一層機能していきそうですね。
鈴木:はい。空間が変わっても、SHUTLの根っこにある「都市と文化の関係を問い直す」というミッションは変わりません。むしろ今は、もっと自由に、もっとダイナミックに進化している最中。作り手と受け手、伝統と現代、まちと空間が交差する、次なる10年に向けた文化にまつわる実験は、すでに始まっています!
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