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(INTERVIEW)

【INTERVIEW】 キム・ソンへ個展 「Hand in Hand」

12月5日から開催される「Hand in Hand」。
作家活動20周年を迎えるキム・ソンへさんに、今回の展示の見どころや制作背景についてお伺いしました。

インタビュアー:SHUTLディレクター 黒田 純平(株式会社マガザン)

まずは自己紹介をお願いします。

キム・ソンへ(以降、キム):在日朝鮮人3世として東京に生まれ育ち、幼い頃から大好きだったファッションを学ぶため専門学校へ進学しました。在学中はスタイリストのアシスタントやアパレルの現場で経験を積む中で、内装デザイナーという職業に出会い、その世界に強く惹かれていきました。
「誰も見たことのないものを形にしたい」という思いが芽生えたのもその頃で、その探究心がきっかけとなり、シャンデリアづくりを始めるようになりました。

作家活動を始めてから20年という節目を迎えられました。これまでを振り返って、どのような経験や出会いが今の表現につながっていると感じますか?

キム:この20年は、本当に多くの方々に支えられ、導かれてきた時間だったと改めて感じています。制作の現場で出会った人たちとの対話はもちろん、生活の中で起こる小さな出来事も、今の自分の感覚や価値観を育ててくれました。挑戦する機会を与え続けてもらえたことが、現在の表現につながっていると強く実感しています。

撮影:四十物義輝 / YOSHITERU AIMONO

ぬいぐるみやおもちゃといった素材を扱うようになったきっかけについて、お聞かせください。

キム:幼い頃からぬいぐるみが大好きで、たくさん集めて大切にしてきました。けれど大人になるにつれ、かつて宝物のように扱っていたぬいぐるみたちは押し入れの奥にしまわれ、居場所を失っていきました。
その姿を見たとき、どこか自分自身の在日朝鮮人としての背景と重なるものを感じたんです。居場所を探し続けるような感覚。その共鳴がきっかけとなり、ぬいぐるみやおもちゃを作品として扱うようになりました。

「居場所を失ったもの」「拾い上げる行為」というテーマはご自身の経験とどのように関係していますか?

キム:在日朝鮮人3世として日本に生まれ育つ中で、幼い頃から国籍を理由とした扱いの違いを目にしてきました。
同じ人間であるにもかかわらず、“違い”をきっかけに互いを傷つけてしまう社会への疑問や違和感は、ずっと心の中に残っています。
その原体験が、「居場所を失ったもの」へ視線を向けたり、「拾い上げる」という行為を作品のテーマに据えることに大きく影響しています。

本展は20周年を記念した個展とのことですが、今回の展示に込めたテーマやコンセプトを教えてください。

キム:人との関わりが減っていく中で、”再び手と手を取り合おう”ということを本展のコンセプトにしています。タイトルの「Hand in Hand(手と手を取り合う)」には、人々が互いを傷つけず、光に満ちた未来を共に願いながら歩んでいくという想いが込められています。

今回は異なる分野で活躍する4名のアーティストとのコラボレーションも行われます。共作を通じて感じた刺激や発見があれば教えてください。

キム:今回のコラボレーションでは、スタイリストの相澤樹さん、人形作家の粟辻早重さん、あちゃちゅむデザイナーのしんやまさこさん、俳優の富田望生さんという、まったく異なる分野で活躍されている4名の方々とご一緒しました。
それぞれが持つ専門性や世界観に触れる中で、妥協を許さないものづくりへの姿勢や徹底したこだわりを改めて感じることができ、大きな刺激と発見を得る機会となりました。

20周年を経て、これからの活動で挑戦してみたいことや、関心を持っているテーマはありますか?

キム:最近は「愛」について考える機会が増えています。今後はこのテーマを軸に、さまざまな表現に挑戦していきたいと考えています。

最後に、展示を楽しみにしている来場者の皆さまへメッセージをお願いします。

キム:人生には良いことも悪いこともありますが、この展示を通して、自分にしかない楽しみや本当に好きなことを改めて思い出すきっかけになれば嬉しいです。
大人も子どもも楽しめる内容になっていますので、ぜひたくさんの光を浴びにいらしてください。

(PROFILE)

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キム・ソンへ / Kim Songhe

キム・ソンヘは1982年に在日朝鮮人の三世として東京に生まれた。

18歳まで朝鮮学校に通い、その後、織田ファッション専門学校に進学。

卒業後作家活動を始め、2005年セレクトショップ「Loveless」にて展示したシャンデリア作品が注目を集めたのを契機にシャンデリア作家として独立。以降、国内外の企業やブランドへの作品提供、空間ディスプレイ、プロダクトデザインを手掛けてきた。

2009年には韓国・ソウルのハンガラム美術館で開かれた「U.S.B: Emerging Korean Artists in the World 2009」展や、アメリカ・サンフランシスコのSUPERFROG Galleryにて作品展示を行ったほか、2016年には初となる作品集『TROPHY』を刊行。それに合わせ、ラフォーレ原宿で大型展覧会「トロフィー」を開催し、好評を得た。

ぬいぐるみやアメリカン・トイ、達磨や招き猫、熊手といったアイテムをコラージュして作られるキムの作品群。「ジャンク・コラージュ」と評されるこうした手法をキムが採用するのは、キムの在日朝鮮人三世という出自と無関係ではない。

作品には、常にマイノリティーとして生きてこざるを得なかったキムの多文化主義に対する理想が投影されている。だからこそ彼女の作る作品は一見ごちゃごちゃな「ジャンク」であるようでいて、その世界は奇妙なバランスで均衡を保っているのだ。

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