(INTERVIEW)
【SPACE RENTAL INTERVIEW】SoraTo合同会社・Miyu Mori「what holds us ― 私たちをかたちづくるもの ―」

SoraTo合同会社が企画・主催する「what holds us ― 私たちをかたちづくるもの ―」が、2026年9月5日(土)〜9月9日(水)、SHUTLにて開催されました。
本展では、石・糸・花を手がかりに表現する3名の作家の作品を通して、記憶や人との関わり、社会や文化とのつながりなど、私たちが生きるなかで受け取り、積み重ねてきたものに目を向けました。
会期中は、ファッションプレゼンテーションショーやアーティストトークも実施し、アートとファッション、日本と香港という異なる背景を交差させながら、新たな表現の場がつくられました。
今回は、本展を企画・主催したSoraTo合同会社のMiyu Moriさんに、SoraToの活動や本展の企画背景、SHUTLという空間との出会い、そして今後つくっていきたい表現や場についてお話を伺いました。
インタビュアー:佐藤 有紗(株式会社マガザン)
ファッションプレゼンテーションショー
ブランド:AOUMEMIYA
動画:伊藤 隆之佑
写真:Mỳ Nguyễn
音響:Chika Kotono
アーティストトーク
出演:尾崎 慎、Cheng Halley
MC:Sara Ikegaki
動画:大橋 遥琉
Miyu Moriさんの自己紹介と、SoraTo合同会社の活動について教えてください。
Miyu Mori :Miyu Moriと申します。
私は、日本と香港を拠点にモデルとして活動する一方で、SoraTo合同会社を立ち上げ、会社としても日本と香港を中心に、アートとファッションを軸とした企画・空間演出・イベント・PRなどを行っています。
SoraToでは、作品を展示することにとどまらず、アーティストやデザイナーの表現を、企業や社会、異なる分野の人々へとつないでいくことを大切にしています。
グローバルに活動しているからこそ、国や文化、ジャンルを越えて人や表現をつなぎ、新しい出会いや仕事が生まれる場をつくることを目指しています。
SoraTo合同会社を立ち上げた背景を教えてください。
Miyu Mori :才能のあるアーティストやクリエイターが、創作活動を中長期的に続けられる環境をつくりたいという思いで立ち上げました。素晴らしい作品をつくっている方でも、作品制作だけで安定した収入を得ることは簡単ではありません。
制作を続けながら展示をして、作品が評価され、継続的に売れるようになるまでには、どうしても時間がかかります。
その過程で、才能があっても、生活のために制作時間を減らしたり、創作そのものを諦めてしまったりする方もいます。
一方で私は、アーティストが持っている能力は、これからの時代、企業やブランドにとってますます価値を増していくものだと思っています。
作品を販売することだけでなく、その感性や発想力を社会のさまざまな場所で活かしていけると考えています。
そのため、SoraToでは、企業からPRやイベント・空間演出などの仕事を受け、そのプロジェクトにアーティストやクリエイターにも参加してもらう。
そこで新しい仕事や収入が生まれる。そして、SoraToとしても事業を継続しながら、そこで得た利益を新しい展示や挑戦の場に還元していく。
そんな循環を、今後もつくっていきたいと思っています。
過去展示会:“Still, a Girl: volume 2”in Hongkong(2026)/ 撮影:C SI XU
過去展示会:“Still, a Girl: volume 2”in Hongkong(2026)/ 撮影:C SI XU
今回の「what holds us ― 私たちをかたちづくるもの ―」を企画するに至ったきっかけと、私たちをかたちづくるというテーマに関心を持った背景について教えてください。
Miyu Mori :「私たちは、自分の意思で選んでいるつもりでも、その判断基準自体を社会から与えられているのではないか」という疑問が、今回の企画の出発点にありました。
何を美しいと思うのか、何を成功と考えるのか、どのような生き方が正しいとされるのか。そうした基準は、家族や周囲の人、文化、教育、社会、そしてSNSやメディアなど、さまざまなものから知らないうちに影響を受けています。
自分で選択しているように見えて、実はその選択肢や価値基準そのものが、すでに外側から形づくられているのかもしれない。その少し皮肉な構造に関心を持ったことが、「what holds us」のきっかけとなりました。
同時に、人はそうした影響から完全に切り離されて存在することもできません。
これまでの記憶や人との関わり、社会や文化から受け取ってきたものが積み重なって、今の自分がつくられているとも考えています。
今回の展示では、石・糸・花という異なる素材や表現を通して、私たちを無意識のうちに形づくっているものに目を向け、「今の自分をつくっている基準は、いったいどこから来たものなのか」を問い直す場にしたいと考えました。
撮影:伊藤 隆之佑
「what holds us ― 私たちをかたちづくるもの ―」というタイトルには、どのような意味や思いを込めていますか。
Miyu Mori :「what holds us」という言葉には、「私たちを支えているものは何か」という意味と同時に、「私たちを今の形につなぎ止めているものは何か」という問いを込めています。
目に見えるものだけではなく、言葉にしきれない感情や、何気なく残っている記憶、過去から現在まで続いているものも含めて、人の輪郭はつくられているのではないかと捉え、
そのため、日本語では直訳ではなく「私たちをかたちづくるもの」としました。
展示を見る中で、来場者自身が「自分にとっての ” what holds us “ は何だろう」と考えるようなタイトルにしたいと思っていました。
design:Chika Kotono
本展では、石・糸・花をそれぞれ「長い時間や記憶」「受け継がれてきたものや人との関係」「失われるものと残るもの」を表現する手がかりとしています。 これら3つの素材・モチーフを選んだ理由と、それぞれの作品を通して来場者にどのような感覚を残したいと考えていたのかを教えてください。
Miyu Mori :石・糸・花を選んだのは、それぞれがまったく異なる時間や質感を持っているからです。
石には長い時間の蓄積や重さがあり、糸には人と人、過去と現在をつなぐような性質があります。一方で花は、変化し、やがて失われていく存在です。
この三つを同じ空間に置くことで、「残り続けるもの」「受け継がれていくもの」「移ろっていくもの」という異なる時間の流れを、一つの展示の中で感じてもらいたいと考えました。
作品をただ見るだけではなく、石の重さや糸の柔らかさ、花の儚さといった、それぞれの素材が持つ感覚を通して、自分自身の記憶や時間の流れにも自然と意識が向くような体験になればと考えていました。
撮影:伊藤 隆之佑
撮影:伊藤 隆之佑
撮影:伊藤 隆之佑
今回の企画では「銀座で開催する意味」を明確に設定されていました。銀座という場所を、今回のテーマとどのように結びつけて考えていましたか。
Miyu Mori :銀座は、長い歴史の中で価値が育まれてきた街だと捉えています。
老舗や百貨店、ラグジュアリーブランド、ギャラリー、劇場などが集まり、何が美しいのか、何に価値があるのか、何を文化として残していくのかという基準が、さまざまな形で蓄積されてきた場所でもあります。
今回の「What Holds Us」では、私たちは自分で物事を選択しているようで、その判断基準自体が社会や文化によって形づくられているのではないか、という問いを持っていました。
その問いを考える上で、すでに多くの価値や文化が積み重なっている銀座という場所に、このテーマを重ねてみたいと思いました。
「私たちをかたちづくっている基準は、どこから来たものなのか」というテーマを、より現実の社会と接続して提示できると考えました。
SHUTLの空間や立地が、今回の作品構成や来場者の体験にどのような影響を与えたと感じていますか。
Miyu Mori :今回、SHUTLを選んだ理由の一つに、既存の展示形式にとらわれず、少し実験的な展示に挑戦したいという思いがありました。
SHUTL自体が、伝統と現代の新たな接続方法を生み出す「実験場」というコンセプトで運営されており、その姿勢にも強く共感していたため、今回の展示をSHUTLで実現したいと思いました。
アート作品を並べて見せるだけではなく、異なるジャンルをあえて同じ場所で交差させることで、それぞれを単独で見るだけでは見えてこない関係性や、新しい捉え方を生み出したいと考えていました。
SHUTLだからこそ、今回のような実験的な展示を実現できたと感じています。
撮影:Mỳ Nguyễn
撮影:Mỳ Nguyễn
撮影:Mỳ Nguyễn
SHUTLでは初めてとなるファッションプレゼンテーションショーを実施いただきました。アート作品が置かれた空間をモデルが回遊する形式にしてみて、どのような可能性や発見がありましたか。
Miyu Mori :今回特に感じたのは、ファッションを「服そのものを見せる表現」としてだけではなく、空間や作品との関係の中で体験する表現として提示できる可能性です。
今回のプレゼンテーションショーでは、アートとファッションをあえて切り離さず、同じ空間の中で見せることを大切にしました。
一般的なランウェイ形式とは異なり、モデルがアート作品の間を回遊することで、服も作品も空間の一部として感じてもらえる構成にしています。
私自身、モデルとしてファッションの現場に立ってきたからこそ、ファッションとアートを別々に置くのではなく、身体を媒介にして一つの体験としてつなげたいという思いがありました。
どちらかを主役、どちらかを背景にするのではなく、アートとファッションが互いに作用し合いながら一つの体験をつくる。そこに、今回の形式ならではの可能性を感じました。
また、こうした試みを通して、ファッションショーそのものにも、まださまざまな見せ方や広がりがあると感じています。
撮影:伊藤 隆之佑
会期中、来場者の反応など、作品と人との関わり方などで印象に残っている出来事はありましたか。
Miyu Mori :印象的だったのは、ファッションを単に「服」として見るのではなく、一つの作品として受け取ってくださる方が多かったことです。
アート作品と同じ空間に置き、プレゼンテーションショーでも身体や動きを含めて見せることで、服の素材や背景、制作に込められた思想そのものにも目を向けてもらうことができました。
また、日本と香港のアーティストを交えたアーティストトークも行いました。
展示のテーマである「記憶」や「人との関わり」について、それぞれの作家の話を聞くことで、同じテーマでも、育ってきた環境や文化によって捉え方が異なることが見えてきました。作品だけでは伝わりきらない背景や思想を来場者と共有できたことも、アーティストトークを行ってよかったと感じた点です。
アートとファッション、さらに日本と香港という異なる背景をあえて同じ場所に置くことで、それぞれの違いや共通点がより見えやすくなり、来場者自身の価値観や記憶に意識を向けてもらうきっかけになったと感じています。
アーティストトーク:(左)Cheng Halley、(中央)Sara Ikegaki、 (右)尾崎慎/撮影:大橋 遥琉
「来場者が自分自身の記憶や価値観へ意識を向ける」という体験は、実際の会場でどのように生まれていたと感じますか。
Miyu Mori :今回の展示では、一つの解釈や答えを提示するのではなく、来場者の中に問いを残すことを大切にしました。
作品を見てその場で立ち止まり、自分の記憶や価値観について考える人もいれば、すぐには言葉にならなくても、心のどこかに小さな引っ掛かりが残る人もいる。
一方で、そのまま通り過ぎる人もいると思います。
どの作品に惹かれるのか、何を感じるのかは人によって大きく異なります。
その違い自体が、その人自身の記憶や経験、これまで培ってきた価値観とつながっていると考えています。
「なぜ自分はこの作品に惹かれるのだろう」「なぜこう感じるのだろう」と考えることで、作品を見る視線が少しずつ自分自身へと返っていく。
そうした過程の中で、普段は意識していない自分の価値観や、その価値観がどこから生まれたのかといった部分に目を向ける体験が生まれていたのではないかと感じています。
作品を理解してもらうことももちろんですが、作品をきっかけに、それぞれの中に新たな問いを持ち帰ってもらうことを大切にしていました。
撮影:Miyu Mori
今回の展示を終えた今、どのように感じていますか。
Miyu Mori :今回の展示を終えて、アートとファッション、そして日本と香港という異なる背景を一つの空間で交差させることに、改めて大きな可能性を感じました。
一方で、実際に形にしたからこそ見えた課題も多くありました。
だからこそ、今回を一つの完成形と捉えるのではなく、SoraToとしてこれからどのように表現や体験の幅を広げていけるかを考えていきたいと思っています。
今後、SoraToとしてどのような表現やコラボレーション、場をつくっていきたいと考えていますか。
Miyu Mori :今後も、異なるジャンルや文化を掛け合わせながら、意外性や遊び心のある企画をつくっていきたいと思っています。
香港だけでなく、他国でもイベントを開催し、その土地で活動するアーティストやデザイナーと一緒に、その場所ならではの企画をつくっていきたいです。
また、企業や地域、商業施設、ホテルなどとも連携しながら、展示だけに限らず、ファッションプレゼンテーションやアーティストトークなど、さまざまな形で表現を届ける場を増やしていきたいと考えています。
撮影:Mỳ Nguyễn
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SoraTo合同会社
SoraTo は、日本と香港を拠点に、アートを軸とした事業を展開しています。
空間演出・デザイン、クリエイティブコンサル、イベント事業の 3 つを中心に、企業やクリエイターに向けた企画・支援を行っています。
展示イベントは、クリエイターの発表機会や新たな協働を生み出すインキュベーションの場として自社で企画・運営しています。
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