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(INTERVIEW)

【SPACE RENTAL INTERVIEW】furuta 2024-25 AUTUMN/WINTER Exhibition

現代の表現者が日本文化と出会い直し、自らの表現と伝統を結びつけることで、「未来のオーセンティック」を生み出す実験場(ラボ)として立ち上がったSHUTL。2023年10月のオープンから多種多様なアーティスト/クリエイターの方々に、レンタルでのスペース活用をいただいています。

今回は、2024年3月21日(木)〜2024年3月24日(日)に【furuta 2024-25 AUTUMN/WINTER Exhibition】としてSHUTLのスペースをレンタルし展示会を開催いただいた、ファッションブランド『furuta』のデザイナー古田由佳利さんに、ご自身のクリエイティブから今回SHUTLのスペースを利用した背景や展示会の感想まで、お話を伺いました。

インタビュアー: 株式会社マガザン 武田 真彦、黒田 純平

 

 

 

 

まずは自己紹介をお願いします。

古田と申します。東京で活動をしていて、主にレディースウェアを取り扱う『furuta』というブランドを展開しています。
furutaは2017年PREに5型ほどを発表し、その後の17年AWで本格始動しました。
現在では多くのアーティストさんや女優さんにご愛用いただいています。ブランドと並行して衣装制作を行っており、主な実績としては松任谷由実さんなどのアーティストさんのステージ衣装制作、CM衣装やブライダルなどの様々なジャンルに携わらせていただいています。

今回の展示会で行ったシーズンのテーマ「comme un chat」のきっかけとなった愛猫

ファッションブランドを始めたきっかけを教えてください。

小さいころ、母親の教育方針でピアノやクラシックバレエ、油絵等色々な習い事をやっていました。そのなかで色々な挫折もあったのですが、中高生の時に突然ファッションに目覚めたんです。習い事のおかげでずっと芸術に興味があったのですが、ファッションには芸術の要素も入っていて、デザイン画という絵を描いて形にしていく工程があったり、自分が得意であることや、やりたいことが全部詰まっていると感じました。高校生の頃には既にデザイナーになろうと思っていたので、東京に出ることや、留学を見据え、アパレルショップで販売員のアルバイトをしながら地元・愛知県の服飾の短大を卒業しました。その後に東京へ上京し、文化服装学院に入学してBFB(文化ファッションビジネススクール)へ進学し、延べ3年間を修了しました。その後、デザイナーとしてワールド、ケイタマルヤマに勤めたあと、独立しました。

furuta をはじめ、ご自身の制作におけるコンセプトや大切にしていることはありますか?

furutaは以下のように掲げています。

furutaは、「ドレスを日常に」をコンセプトに、全ての女性性に響く洋服を展開しています。
私たちの尊い営みに共存する花や生き物など自然の存在を、美しい刺繍などの技術で表現し、女性が生きる上で切り離すことのできない生活に沿うデザインやディティールを提案しています。
女性たちは、スーツやパンツルックなど、社会の歴史の中で男性と向こうを張るためのスタイルで戦ってきたという背景があり、それは思考やトレンドとは別に、女性開放のための大切なファッションの変遷でもあります。

ジェンダーフリーが進む中で、その風潮はだんだんと過去になりつつありますが、それぞれがより本質のままに、肉体的な性別を越えて女性性もまた、自由に体現されながら対等に愛され暮らしてゆけますように。

 photographer/Isao Hashinoki(nomadica)  hair/Tsutomu Namaizawa(B.I.G.S.)  makeup/Tae  model/Momoka Kihara  special thanks/CHIPPS COMPANY

 photographer/Isao Hashinoki(nomadica)  hair/Tsutomu Namaizawa(B.I.G.S.)  makeup/Tae  model/Momoka Kihara  special thanks/CHIPPS COMPANY

 photographer/Isao Hashinoki(nomadica)  hair/Tsutomu Namaizawa(B.I.G.S.)  makeup/Tae  model/Momoka Kihara  special thanks/CHIPPS COMPANY

全ての人は、肉体的な性別を超えて「女性性」と「男性性」を持ち合わせているといわれています。お客様によく「furutaの服は褒められ服」と言っていただくことが多いです。それは着用者本人だけではなく、見ている側の人の(例えばそれが男性だとしても心に持つ)「女性性」に響いているということだと私は感じています。

またそれとは少し逆説的に聞こえるかもしれませんが、トレンドや消費といった概念の対極にある、「後世に残る一点」を目的としたものも制作しています。例えば、自身で手刺繍を施したものなど、ある種アートのような作品ですね。

このコンセプトに至る背景には、どのようなことがありましたか?

クラシックバレエをやっていた経験が大きいと思います。
物心がつく頃からバレエを習っていたので、女性への体型の変化には敏感でした。棒みたいな身体が、ある時から曲線的な部分が現れて生理が始まり、徐々に肉体に性的な変化が現れてくることで物理的に踊りにくくなる違和感と、それによって性別をはっきり区別させられること、その2つが自由を失うように感じられて嫌でした。
また、私自身幼少の頃から身長が高めで、「(当時でいうところの)女性らしさ」には当てはまっていないような気持ちも抱えていましたし、キャリアウーマンが目立つようになってきた時代性も相まって、私自身は「女性性」よりも「男性性」に注目し、大切にしすぎたのかもしれません。私が世間から特に何をされたわけでもありませんが、男女不平等な空気感、不穏だと感じられた社会に対して、自分なりに必死にもがいていたのかもしれません。
ですが、年齢を重ねるにつれて、ふと思ったんです。
「自分が持っているものは素直に受け入れよう」と。
私の場合は、自分が持つ素材の基礎を拒んでいるようで、それは豊かさとは真逆な行為だと感じました。平たくいえば「女性は女性のままで愛されていて良い。」と思うようになったのです。
昨今では「多様性」という言葉が飛び交い、自由な感覚を認め合う社会になりつつありますが、並行して世の中がみんな平等に扱われ、全てが画一的でフラット、差別化しない方向性のことを「多様性」と表現することもあるのではないでしょうか。どちらが善し悪しかではありませんが、そんな時代を生きているからこそ「今」大切なことは、「心の中の豊かさ」だと考えるようになりました。

例えば「月と太陽」や「白と黒」など、世の中には対極なものが存在しています。どちらかを良いという人もいればその逆もいる。別のものが存在するからこそお互いが相乗効果となって認め合い、豊かさに繋がっていると感じています。
だから、先ほど話したように、私も含めて人に一様に備わっている「女性性」と「男性性」をひとつにまとめてしまわなくても良いんじゃないか、と考えています。
現在、私が女性服を選択しているのは、単に私自身女性の肉体を持っていて、当然ではありますが女性の肉体に対しての理解が深いからです。そこへ更に、furutaは「女性性」へフォーカスし、ファッションというフィールドで「愛や豊かさとは何か」を探し続け、そしてできる限り提案していきたいと思っています。洋服は「心の現れ」でもあることは、ファッションがお好きな方であれば共感いただけると思います。
ファッションはそもそも「自由」であり、好きなように着ることが私が愛してやまないファッションの本来の在り方だと考えています。そういった考えから、furutaは「女性のため」ではなく「女性性のために」と謳っています。

それではSHUTLとfurutaさんの関係についてお伺いします。SHUTLはどのように知られましたか?また、SHUTLのスペースやコンセプトについてどう思われましたか?

SHUTLとの出会いは、私の友人がSHUTLスペースマネージャーの黒田さんを繋げてくれたことがきっかけです。SHUTLのコンセプト「未来のオーセンティックを生み出す」は、まさに洋服も同じだと思います。様々な人が携わり、長い時間をかけ繋ぎその時代に併せてブラッシュアップして未来のオーセンティックになるのです。
なので、このコンセプトを掲げるスペースで展示会をすることは、自分にとってすごく自然なことでした。

そしてやはり興味深かったのが、空間です。黒川紀章氏のカプセルがあるSHUTLで展示することで、衣食住の「衣」と「住」が共存する展示会ができ、とても嬉しいです。愛知県生まれという地域柄、幼少時から両親や友人とのお出かけ、遠足などで歴史的建築物が展示されているとある博物館にまめに遊びに行っていました。「建築」がレジャーのひとつとして自然と存在していたので、建築やカプセルについてそこまで詳しいわけではありませんが、自分の思い出・魂に響く空間だと直感的に感じたんです。直感は特にファッションにとって大切な部分ですし、この空間を見たときにfurutaの服が並んでいる光景がすぐ目に浮かびました。

SHUTLで展示会を開催して良かった点はありますか?

黒田さんをはじめ、現場スタッフさんの人柄とサポートは本当にありがたかったです。展示の現場では少人数でやらないといけないことも多いのでとても助かりました。
贅沢にもカプセルをフィッティングルームとして使わせてもらったことも嬉しいポイントでした。furutaのお客様は女性がメインなので、会場内のフィッティングルームなどの設備への配慮を優先して会場を選んでいます。今回カプセルの中でゆっくりご試着いただけたことは、お客様の満足度が高いように感じました。
他には車での搬入搬出がしやすく、直接展示会とは関係のない表向きからはわからない使い勝手の良さもとても重要だと感じているので、やりやすかったです。
あとは銀座という立地も良かったと思います。最初は「展示会といえばこの辺り」という地域からは離れているため悩みましたが、銀座はファッションの街で、シンプルにかっこいいエリアですし、歌舞伎を観に行く人などおめかしして出向くイメージがあるので、おめかし「ついで」にご飯やお買い物、ギャラリー等に行けるところですよね。そこに「ドレスを日常に」というfurutaのコンセプトと共感性を感じました。実際展示が始まると、アクセスの良さも手伝って、既存のfurutaのお客様も含めてこれまでの展示会とさほど変わらず集客することができましたし、いろいろな方に来場いただくことができました。

暮らしの中でナチュラルに訪れてもらいたいので、ファッション好きの方で建築がお好きなパートナーと一緒に見に来てくださったというお客様もいらっしゃり、SHUTLの中だけでも色々な「ついで」があって嬉しかったですし、furutaの考え方とも繋がっていると感じました。銀座は、デートするだけでもいろんな「ついで」がシナプスみたいに繋がっていく魅力的なエリアだと実感できましたね。

とても嬉しいご感想をいただき、ありがとうございます。SHUTLでの展示会にあたり、特に意識したことや実験したことはありますか?

私は、これまでの定義や他の成功例に囚われず、自由にインスピレーションを受けて表現をしたいといつも思っています。今回は、「特定の地域で、平場の白いスペースで〜」といった不文律に従わず、自分の中でピンときたものを積み重ねながら展示会を作り上げることができたこと自体が、チャレンジだったと思います。

SHUTLにこうしてほしいとか、期待する点はありますか?

電気ケトルが欲しかったです!笑 それは半分冗談半分本気ですが、今後のSHUTLさんに期待していることとしては、「風の時代」といわれているように、今は知的な豊かさや人間関係の豊かさが大切な時代なので、これまでSHUTLに関わった人が交流できる機会があれば嬉しいなぁと思いました。SHUTLという一つのスペースに興味や共感を持っている同志が集まる機会があれば、きっと共感し合えると思います。例えば、個々にSHUTLで展示会やPOPUPをされた異業種のアーティストやブランドとの合同展や、サンプルセールなどのイベント開催だったり、SHUTLからコラボレーションが生まれて横につながっていく取り組みがあれば面白いなぁと思いますね。

そして、SHUTLでの展示を終えて改めて感じるのは、黒川紀章氏のコンセプトも、カプセルも、ブランドの服も、生きとし生けるものが、生きるために最低限必要なものではないけれど、人間だからこそそれがとても大切で、強く理解でき、愛する部分でもあるということです。昨今の環境変動、新型ウィルスに災害、内戦や不景気と、並べるときりがない未来に希望を持ちにくい環境も手伝って、無駄を排除し、みんな同じ趣味嗜好に傾きがちです。ですがそんな時代だからこそ、黒川紀章氏の建物のように、一見不必要にも思えるユニークさを持つものが際立ちながら次の未来を作っていくのではないでしょうか?
そうやって人類の始まりからずっと繰り返し続けて今ができているのではないかと思います。だから、人類が存在し続ける最後の日までカプセルが残ってほしいですし、SHUTLをこれからも続けてほしいと思います。

ありがとうございます! SHUTLを運営する松竹株式会社、そして株式会社マガザンにとっても、コミュニティをとても大切にして育んでいきたいという想いがありますので、とても共感します。 では最後に、これからの活動の予定をお聞かせください。

今年は特に、今までやらなかったことにも挑戦していきたいと思っています。自分自身で「こうあるべきだ。」と制御してしまっている固定概念の部分を見直し、自分の心に真っ直ぐに向き合うことを心がけて今後も取り組んでいきたいと思います。SHUTLでの展示もその取り組みの一つでした。また色々と活動報告してゆけたら良いなと思いますので、今後もfurutaをよろしくお願いします。

本当に楽しみです!ありがとうございました!

(PROFILE)

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古田 由佳利

furuta Designer

株式会社ワールドに就職後、コレクションブランドKEITA MARUYAMAで丸山氏のアシスタントを経て独立。企画デザイナーの傍ら、オーダーメイドのブライダルドレスやユニフォーム、松任谷由実氏をはじめとするアーティストの衣装製作をはじめ、2017よりfuruta(フルタ)プレコレクションをスタート。2017A/Wより本格デビュー。

 

designer/Yukari Furuta

furuta design office
instagram:@maisonfuruta
web:https://maisonfuruta.com/
mail:info@maisonfuruta.com

photographer/Isao Hashinoki(nomadica)
hair/Tsutomu Namaizawa(B.I.G.S.)
makeup/Tae
model/Momoka Kihara
special thanks/CHIPPS COMPANY

location/SHUTL

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