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(INTERVIEW)

【INTERVIEW】SHUTLの「らしさ」をウェブサイトに。未知の良さを見出すShhh.Incの仕事(前編)

現代の表現者が日本文化と出会い直し、自らの表現と伝統を結びつけることで、「未来のオーセンティック」を生み出す実験場(ラボ)として立ち上がったSHUTL。2023年10月のオープンから多種多様なアーティスト/クリエイターの方々と、新しい表現やカルチャーを発信しています。

今回は、SHUTLのウェブサイトを制作した株式会社Shhhの重松佑さん、宇都宮勝晃さんにロングインタビューを実施。国内外から評価を受ける独自のデザインとその美学から、SHUTLのウェブサイト制作の話まで、前後編の2回に分けて深掘りします。

前編では、Shhhを立ち上げた経緯、お仕事への姿勢と手法、そしてSHUTLのウェブサイト制作が始まったきっかけと制作にあたっての情報整理について伺いました。

インタビュアー : 株式会社マガザン 武田真彦(SHUTLディレクター/サウンドデザイナー)

「耳を澄ます」から始まる、Shhhのデザインへの姿勢

まずはお一人ずつ、自己紹介をお願いします。

重松 :Shhhの代表取締役でクリエイティブ・ディレクターの重松佑です。Shhhはウェブサイトを中心としたデザイン業務を行っており、そのなかで僕は企画やディレクション、プロジェクトマネジメント、またコピーライティングなども担当しています。

宇都宮:Shhhのアートディレクションとデザインをしている宇都宮勝晃です。企業、商品、サービスなどブランドの「ありたい姿」「らしさ」を明確にし、精度高く視覚化していくことを担当しています。

ありがとうございます。ではShhhを立ち上げた経緯を教えてください。

重松:「Shhh Inc.」という社名の「Shhh」は、口元に人差し指をあてる仕草のことなのですけれど、この言葉に大きく2つの意味を込めています。ひとつは、シーっとすることで「耳を澄ます」こと。私たちの仕事は常にクライアントがいてデザインを受注制作しています。そのクライアントの「想い」にどれだけ耳を澄まして深く聴くことができるか。そして、まだ見えていない価値を一緒に見出していくことに力を注いでいます。なにか声高にプレゼンテーションをしたり説得したりするよりも、耳を澄ますことで新たな価値を見つけていけるよう、私たちの仕事の姿勢を社名に込めています。もうひとつは「静けさ」「穏やかさ」「美しさ」といった印象を持つデザインをつくっていきたいという想いですね。例えば、ECMの音楽、アンドレイ・タルコフスキーの映画、サラ・ムーンの写真といった作品が与えてくれる「静かだけど満ちている」ような世界観は、デジタルのデザインで感じることが少ない中で、私たちはできる限りそのような静謐な印象を持つ世界観をつくりたいとも考えています。

Shhh.inc ウェブサイト

どのようにお二人でShhhを始められたのですか?

重松:僕が前職で株式会社ロフトワークで働いていたとき、宇都宮さんはフリーランスでデザイナーをされていました。社内の別プロジェクトで宇都宮さんのデザインを見て、いつか一緒にお仕事をしたいなとずっと思っていたんです。。その後、自分のプロジェクトにも宇都宮さんに参加いただいたことがあって。ご一緒したその仕事では、とても良い手応えがあり、他の仕事も一緒にできたらもっと面白いことができるだろうなと感じていました。宇都宮さんとは元々友人だったわけでもなく、実はShhhを始める前も一緒に仕事をしたのはその一度しかなかったんです。なので、Shhhを始めるときに、宇都宮さんと仕事したときの感触をずっと忘れられず、「一緒にやりませんか?」とお声がけしたというのが経緯ですね。

宇都宮さんとのお仕事がずっと心に強く残っていたんですね。株式会社ロフトワークを辞めてShhhとして独立する前には宇都宮さんにお声がけしていたのですか?

重松:実は、まだ独立するか悩んでいたときに、宇都宮さんに悩みを相談したことがあったのですが、そのとき自分が会社にいながら感じていたことと、宇都宮さんがフリーランスとして感じられていたことの中で似たような課題があるということが分かったんです。そして話をしていくうちに、やっぱり宇都宮さんと一緒に仕事ができれば、これからも面白い挑戦をしていけると強く感じて。悩みを相談するだけの予定だったのですが、その帰り道にはもう「宇都宮さん、一緒に会社やりませんか!」と言ってましたね。笑

そのとき宇都宮さんはどう感じていらっしゃいましたか?

宇都宮:フリーランスとして7年ほど働いていたのですが、ちょうどその頃ひとりで仕事を続けていくことへの限界を感じ始めていた時期でもありました。基本的に仕事とは「自分が出来ること」に対し依頼が発生していきます。そのため出来ることを意識的に広げていくことが必ず必要となりますが、そこにやや頭打ちを感じていた時期でもありました。そのタイミングでの誘いだった事から、自身の環境を変えるという意味でも僕にとって重松さんは、これまで仕事をしてきた中で最も記憶に残った方の一人でもあったという意味でも、ぜひ一緒にやりたいと思い、話を進めていく事にしました。

左 重松佑 右 宇都宮勝晃

お二人の信頼し合う関係がわかる、とても良いお話ですね!ではShhhとしてのお仕事で主な実績をご紹介ください。

重松:これまで、ぺんてる株式会社さんのコーポレートサイト、パーソルキャリア株式会社さんのデザイン組織「NUTION」のブランド立ち上げ、JAF(一般社団法人 日本自動車連盟)さんの手がけるメディアサイト「JAF Mate Online」のローンチなどのお手伝いをさせていただきました。最近すすんでお伝えしたい実績としては、株式会社オーディオテクニカさんのグローバルプロジェクト「Analogue Foundation」のブランドサイトですね。オーディオテクニカさんは音響機器メーカーとして「アナログ」であることこそが、最高水準のオーディオソリューションを提供できるすべての原点、という想いがあり、このプロジェクトは60周年を迎えた企業のブランドメッセージを体現するためのウェブサイトリニューアルでした。このウェブサイトは、ウェブの世界三大アワードと呼ばれる「FWA」「Awwwards」「CSS Design Award」の全てで受賞させていただいたとともに、カリフォルニアに拠点を持ち、1959年から発行している老舗のデザインマガジン「Communication Arts Magazine」から取材の機会もいただいたりと、とても印象に残るプロジェクトでした。

Analogue Foundation ウェブサイト

重松:そしてもうひとつ、SHUTLのウェブサイト制作にもつながる、株式会社マガザンさんのコーポレートサイト制作についても触れさせてください。
元々、マガザン代表取締役の岩崎くんのことを知っているということもあり、制作の過程ではちょっと実験的なワークショップを開いたり、マガザンの周囲の方々にインタビューをしたり、交換日記のように毎週コミュニケーションをとらせていただいたりと、これまでやったことのない様々な挑戦をプロジェクトに取り入れていきました。今振り返ると、マガザンさんのプロジェクトを機に、Shhhが目指す深く聴くという制作スタイルを、より「能動的に深く聴く」ような形に大きく前進させることができたと感じています。

マガザンとのワークショップの様子

株式会社マガザン ウェブサイト

そう思っていただけて、とても嬉しいです!いろんな特性を持った人が集まっている会社なので、まとめることは難しかったかもしれないと想像しておりましたが。笑 Shhhさんの取り組みのおかげで、ひとりひとりが自由に会社のことを言語化していくことができました。マガザンとしても、メンバーみんなとても楽しみながら取り組むことができました。

SHUTLプロジェクトの開始

では、SHUTLのウェブサイト制作についてのお話に移りたいと思います。最初にSHUTLの相談をさせていただいた時、率直にどう思いましたか?

重松:たしかマガザンコーポレートサイト制作のプロジェクトの1年後くらいでしたか。まずは、またマガザンの皆さんと一緒に仕事ができるということが嬉しかったですね。誰と一緒にプロジェクトをつくっていくかはとても大切なポイントですので、楽しみに感じました。

本当にありがたいです。お声がけさせてもらったのは、SHUTLがオープンする1年ほど前でしたね。

重松:まだプロジェクトの全貌が明らかになっていない中、とても印象に残っていることがあって。その時まだ空き地だったSHUTLの建設予定地に視察に伺った際、マガザンのメンバーや、SHUTLのロゴデザインを担当された三重野龍さん、そして松竹株式会社のプロジェクトメンバーのみなさんもおられたんですね。そこで「これからよろしくお願いします!」とご挨拶ができたのですが、松竹の方々も含めてみなさんとても良い表情をされていたんですね。準備段階でたくさん不安もあったと思うのですけど、それよりもワクワクが勝っている、なにか少年のような雰囲気をみなさん持っていると感じました。そのことをとてもよく覚えています。

そんな印象でしたか!

重松:マガザンチームや三重野さんも、京都から一台の車で一緒に来てましたよね!なんか良いグルーヴがあるなぁと感じましたよ。

宇都宮:僕も重松さんと同じで、まずはマガザンさんと一緒にできることが嬉しかったんですね。このチームでならきっと良いものができるだろうなという予感があったので、プロジェクトに対する不安もなく入ることができました。

2022年12月 SHUTL建設予定地にて 撮影:山根かおり

重松:黒川紀章らに代表されるメタボリズム建築はこれまでみたことはあったのですが、実は僕自身、東京生まれ東京育ちではあるのに東銀座には一回も行ったことがなかったんです。隣の築地はイメージがありますが、「東銀座」と聞いても歌舞伎座くらいしか思い浮かぶものがなかったんですね。なので、あまり自分には縁のない場所のように感じていました。でも東京・銀座の一等地ですし、そういった場所に新しいカルチャースポットが生まれることで、エリア自体も面白くなるんだろうなというワクワク感がありました。自分もこれまで知らないエリアに接点が持てて、新しい挑戦に参加できることが嬉しいなと思いました。

お声がけした段階からモチベーション高くプロジェクトに入っていただき、とても頼もしかったです! そして具体的にSHUTLウェブサイトの制作に進んでいくわけですが、SHUTLをつくった想いや中銀カプセルタワービルの文脈の説明をはじめ、ギャラリースペースとしての案内、展覧会/イベント情報、取り組みの紹介記事、お問い合わせなど、非常に多くの情報をひとつのウェブサイトに落とし込んでくださいました。この最初の段階のSHUTLウェブサイトの情報設計において、意識されたことや大切にされていたことをお聞かせください。

重松:ウェブサイトの情報設計は、限られた予算の中でいかに汎用性を高めつつ制作工数を抑えるかなど、プロジェクトごとに存在する制限の中での「現実最適解」を導き出していくところで、きちんと丁寧に進めていかないといけない工程です。そのためにできることって、地道に「何回も検証する」ことが大切だったりするんですね。例えば記事のテンプレートをつくる場合にも、自分で記事のバリエーションをいくつもつくってみて検証を重ねることで、一番無駄がなくかつ不十分でないものにする。ここは目立つところではありませんが、一番、根気と時間がかかったところですね。

SHUTLウェブサイト ワイヤーフレーム

もうひとつ、実は制作の過程であまりお伝えしていなかったのですが、SHUTLにおいて意識的に取り組んだところが、テキストライティングです。SHUTLチームがつくられていた空間コンセプトのテキストを元に、ウェブサイト用にSHUTLのコンセプトやABOUTページのテキストのリライトをさせてもらったのですが、文章を「です・ます」調ではなく「だ・である」調で書いているんです。体言止めなどの表現も多く使っていますね。通常は企業の取り組みだとどうしても「です・ます」調が一般的な中で、SHUTLという実験場ではやはり少し挑発的・刺激的なものにしたいと思ったので、文章もそういった表現にアレンジしていきましたね。

宇都宮:特に、ABOUT ページの SHUTL CONCEPT、SHUTL is のところですね。「新たに息づく」といった言葉遣いは普段なかなか企業のウェブサイトではできないので。なにか「決意」が感じられる言葉にしていますし、新しくつくられるものへの期待感が込められています。

SHUTL CONCEPT

なるほど、ウェブサイトのデザインとテキストが合わさることで、よりSHUTLらしい雰囲気を与えてくれていますね。ウェブサイトを見るたびに身の引き締まる思いがしたのは、このような細かな言葉選びがあるからですね!

後半へ続く

(PROFILE)

Shhh.Inc

https://shhh.jp/

(PROFILE)

重松 佑

Founder, Director

前職ではクリエイティブ・カンパニーである株式会社ロフトワークのシニアディレクターとして約50名のクリエイティブ・ディビジョンを率いる。2019年にShhh inc.を設立。2024年から女子美術大学芸術学部共創デザイン学科にて非常勤講師を務める。

(PROFILE)

宇都宮 勝晃

Co-Founder, Designer

 

仏師への師事後、Webプロダクションにてディレクションへ携わる。2012年よりpresent.の屋号でフリーランスのデザイナーとしての活動を経たのち、Shhh inc.を共同設立。

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