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【INTERVIEW】SHUTLの「らしさ」をウェブサイトに。未知の良さを見出すShhh.Incの仕事(後編)

2022年に解体された中銀カプセルタワービルのカプセルの魅力を再発見し、今の時代に即した文化を発信していく新たなアート&カルチャースペース「SHUTL(シャトル)」建築家・黒川紀章が設計した新陳代謝をコンセプトとしたカプセル2基とそれらを格納する新たな空間を舞台に、日本文化そのものの新陳代謝の展開を目的とし、現代の表現者が日本文化と出会い直し、自らの表現と伝統を結びつけることで、「未来のオーセンティック」を生み出す実験場(ラボ)として2023年10月から動き出しています。
今回は、SHUTLのウェブサイトを制作した株式会社Shhhの重松佑さん、宇都宮勝晃さんにロングインタビューを実施。国内外から評価を受ける独自のデザインとその美学から、SHUTLのウェブサイト制作の話まで、前後編の2回に分けて深掘りします。
後編では、SHUTLのウェブデザインについての具体的な考え方と手法や、これからのSHUTL、そしてShhhの今後の取り組みについて伺いました。

インタビュアー  : 株式会社マガザン 武田真彦(SHUTLディレクター/サウンドデザイナー)

SHUTL「らしさ」の言語化とデザイン

前回の記事「#24【INTERVIEW】SHUTLの「らしさ」をウェブサイトに。未知の良さを見出すShhh.Incの仕事(前編)」では、Shhhさんご自身についてのお話と、SHUTLのプロジェクトに入っていただいた時の所感、SHUTLウェブサイト制作の最初に行う情報設計について聞かせていただきました。今回は、そこから具体的にどのようなデザインが生まれたかをお聞きしたいと思います。

宇都宮:まず前提として、「SHUTL」という場の名前、「Launching Authentic Futures」というコンセプト、そして「日本文化の伝統を継承、発展させ、世界文化に貢献する」という松竹株式会社のミッション、この3つを「SHUTLらしさ」として結合し、視覚化していく事がデザインで満たすべき条件だと考えていました。そこで、マガザンチームがまとめてくれたマインドマップを改めて深く読み込み「SHUTLらしさ」を「継承性」「未来感」「実験性」の3つのキーワードへ集約し、そこを表現の幹として具体的にデザインを進めていく、という言語化による「らしさ」の共有から始めていく方法を取りました。

「SHUTLらしさ」を言語化した3つのキーワード

宇都宮:それぞれ具体的にお話をしていきますね。まず1つ目の「継承性」。ウェブサイトを見ていただくとわかると思いますが、グリッドを際立たせたデザインが特徴的ですよね。これは、もちろん中銀カプセルタワービルやメタボリズムへの連想も踏まえつつ、異なる文脈をもったコンテンツが交差し、接続し、継承されていくさまを表す事も意図しています。また、ABOUTページのSHUTL is に書かれている「織り杼」というアイデアも縦と横の交差が生むグリッドデザインとして体現させています。あと、これは恐らく気づく人は少ないと思いますが、実はグリッドのレイアウトには「三角形」のルールを潜ませることで、「シャトル」という言葉から連想される三角形的な図形のイメージもデザインへ刷り込ませるようにしていたりもします。

グリッドデザイン、「三角形」のルール

宇都宮:そして2つ目の「未来感」。このキーワードはマガザンさんのこれまでのプロセスをまとめたマインドマップへ記されていた「レトロフューチャー」という言葉から着想を得て、その視覚化を行いました。シルバー(グレー)を基調のデザインで構成しつつ、ウェブサイト上に登場する8bit感のあるフォントや、文字のスクロールや画面遷移の際に出現するややカクついた動きのデザインを取り入れることで、レトロフューチャー感を全体に散りばめるような工夫を行いました。

8bit感のあるフォントと動き

宇都宮:そして最後3つ目キーワードである「実験性」。例えばシルバー(グレー)のなかにカラーであえて強い蛍光色をアクセントとして使うことによって、適度な「違和感」を生み出し、そこにオルタナティブ性やユースカルチャー感を演出していくようなシャトルの実験的な姿勢を表すようにしました。

シルバー(グレー)のなかに蛍光色を使用

シルバー(グレー)のなかに蛍光色を使用

宇都宮:これらのような3つの「SHUTLらしさ」を軸としながら、表現アイデアへ展開していく方法でデザインへと落とし込んでいくことで、SHUTL「らしさ」や「ありたい姿」を視覚化していく、という事を行ってまいりました。

とてもわかりやすいです、「らしさ」の視覚化は、Shhhさんのデザインの真髄だと感じています!

宇都宮:ありがとうございます。でも実は今回のプロジェクトでは特別に新しい発見や発明をしているわけではなく、マガザンチームが丁寧にリサーチし、コンセプト化してくれたマインドマップを深く読み込み、それをウェブ用の表現へと変換しただけだったりもするのです。答えは既にある状態だったとも言えると思います。

その言葉たちを拾ってまとめてくださったのは本当にありがたいです!

SHUTLに呼応する、Shhhにとっての実験

ではそのなかで、「伝統と現代の新たな接続方法を生み出す実験場」というSHUTLのコンセプトに呼応する形で、お二人にとっての「新しい試み」や「実験」があればお聞かせください。

宇都宮:ウェブサイトがローンチされる前に「ティーザーサイト」としてページを公開したのですが、その時デザインとしてはまだSHUTLのロゴしか決まっていない状態でした。そのなかでロゴをどう活かし、ティーザーとしての期待感を生み出すことができるかがテーマだった訳です。そこでたまたまその時個人的に3DCGに興味を持っていたタイミングだったので、「まぁ試しにやってみようかな」と思いまして。笑 夜中にちくちくと軽いノリで作り始めてみたら、シャトルというレトロフューチャーな印象ともうまく合致し出し「これはいける」と思えてきたので提案してみました、というのが今回の新たな試みや実験と言えるかもしれません。

SHUTLロゴ 3DCG

SHUTLロゴ 3DCG

そんな感じでつくってもらったんですね!笑 すごく即興性がある制作だったことも、SHUTLらしさに繋がりましたね。

宇都宮:まさにそうですね、先ほど挙げた「実験性」が感じられるティーザーサイトにするためには、予定調和なものになると期待感がつくれないと思うんですよね。あまりみたことのないものを提示することが求められるので、何らかユニークな表現手法が必要になると思っていました。

お二人がニヤニヤしながら3DCGを提案してくださったことをとてもよく覚えています。笑

重松:そうなんですよ。3DCGを入れるんだったら、より世界観を高めるために音も欲しいなって思ってですね。すぐにマガザンの武田さんに電話しました。武田さんも音をつくるのが速かったですね!

いえいえ!すでにShhhさんが言語化をしてくださっていましたし、映像からも音のイメージがしやすかったので、こちらも即興的に数時間でつくった音をお渡ししました。

重松:そのときのコミュニケーションも「音の感じはあのアーティストみたいな・・・」と伝えると、武田さんがすぐ理解してくださったので、話を何段飛ばししても「あの感じ」で通じ合える感覚は、これまでのプロジェクトでご一緒したり、同じ音楽を聞いていたりと、同じような経験を共有しているからこそですよね。、一緒につくるダイナミズムがあってとても楽しかったです。

宇都宮:このプロジェクト全般に言えることだと思うのですが、プロジェクトの目的を果たすことは当然として、そこから以上はあまり堅苦しく考えすぎず、より良いものを作るという意味で気軽に楽しみながら作ってみたり相談し合えたりするところまで到達できた事が良かったなと思います。仕事を越えて一人の制作者として楽しむことができる、というのは仕事をしていくうえで大切な事だと思っています。新規で立ち上がるこのようなプロジェクトというのはどうしても先が見えにくい、不確実な道を歩むことになるため、緊張感やストレスが生まれやすくなるものですが、チームの皆さんと「楽しむ」ということまで至ることができたのは、僕たちにとっても見えない部分ですが大きな成果だったと思います。

では一方で、SHUTLのウェブサイト制作で大変だったことはありましたか?

宇都宮:SHUTLでは、どんな企画よりも先にウェブサイトの制作が最初にありましたので、SHUTLの目指したい方向性に対して良い意味で、期待値と表現レベルのハードルを最も上げる役割を果たそうと思っていました。もちろんハードルを上げすぎると実態と乖離してしまうのでその見極めは大事ですが、一方で予定調和な表現が求められているわけでもない。このバランス感で試行錯誤をしました。ウェブデザインの提案のときに、「ウェブですごくこれからのハードルが上がっちゃったなー」と松竹のメンバーの方が嬉しそうに仰って下さった事が一番嬉しかったですね。デザインができる一つの役割にはそのブランドにおける「適切な背伸び」というのがあると思っています。その背伸びの役割をデザインで果たすことができた事が今回とても良かったと思っています。

ウェブサイトの打ち合わせの時、嬉しくてチームメンバーみんなテンション高かったですから!

宇都宮:確かにそれは感じましたね。先ほどのデザインの3つのキーワードと方向性の話を提案した時に、「Shhhさんが考えられるようにつくってもらうのが一番良いと思います」ということを松竹のメンバーの方が仰って下さった事が記憶に残っていて。そのようにチームメンバーの事を尊重し、信頼して、任せていただけたことも、今回皆さんと良い制作ができた理由の一つになっていると思います。既にウェブサイトのデザインに至る前までに、マガザンチームの皆さんがずっと話し合ってこられた内容のバトンを渡していただいたという感覚がありました。

Shhhが捉えるSHUTLの取り組みの意義、そしてこれから

ありがとうございます。SHUTLのメンバーとして、伝えやすくて編集もしやすい素晴らしいウェブサイトをつくっていただいたことに改めて感謝します。 そのウェブサイトをつかって、オープンから現在までいろいろなチャレンジをしているのですが、お二人はSHUTLの取り組みをどのようにみておられますか?

重松:松竹さん、マガザンさんのSHUTLチームは、黒川紀章らが提唱したメタボリズムという思想をとても柔軟に受け継がれたんだなと思いました。1960-70年代に起こったメタボリズム運動の熱さや勢いを一旦クールダウンして、実際にメタボリズム建築をメタボリズムさせたのがSHUTLだと言えるんじゃないかと。もちろん元々の黒川紀章のコンセプトとは違うかもしれませんが、居住空間をトランスフォーメーションして新しい表現が展開される創造空間にしている、それがとても面白いものだと感じています。

宇都宮:SHUTLは「文化の継承のあり方」がとてもユニークで、それが一番の魅力だと思っています。東銀座という伝統的な文化の印象が強い街で、新たなアートやカルチャーが生まれ、発信されていく事自体、これまで少なかった記憶があるためです。これはまさにSHUTLのコンセプトである「伝統と現代の新たな接続方法を生み出す実験場」の言葉のとおりで、このような文化の継承や更新のあり方が示される事は、日本にとって大事なモデルケースの一つになっていくのではとも思っています。これまでのスクラップアンドビルドの街と文化の在り方には見られない、もう一つの可能性を示すものとして、とても希望の持てる試みになっていくのではと感じています。

重松:Shhhとしても、意義深いプロジェクトに関われたことを嬉しく思います。

ありがとうございます。ちなみに、SHUTLのウェブサイトについて周囲からなにかリアクションはありましたか?

宇都宮:数多くの著名なデザインギャラリーサイトでピックアップをいただくなどのほか、『iDID Magazine』というデザイナー向けのメディアサイトの記事内では「今月のウェブサイト」として取り上げていただいたりなど、まずデザイン業界内で良い評判をいただけたことが自分の観測内では確認することができました。

SHUTLの今後に期待することはありますか?

重松:やっぱり「SHUTL 2」ですね!笑 また、企画としては、やはり松竹さんということで、カプセルを舞台や装置として行うような、演劇系のプログラムを観てみたいです。

期待していてください!笑 最後に、Shhhとしてのこれからの取り組みを教えてください。

重松:これからもウェブサイトを中心としたデザインプロジェクトを手掛けていますが、今年は新しい挑戦が一つあります。それは富山県氷見市にある水産加工会社「中村海産」さんのリブランディングプロジェクトで、昨年から進めてきたパッケージデザインなども含むリブランディングが今年の秋くらいにお披露目できる予定なんです。スーパーに並ぶ食品のパッケージや、、展示会のブース、搬入・搬出用のダンボールのデザインなどもしていますね。

水産加工会社「中村海産」デザイン

水産加工会社「中村海産」デザイン

水産加工会社「中村海産」デザイン

水産加工会社「中村海産」デザイン

素晴らしいですね、とても楽しみにしています! では、インタビュー本当にありがとうございました。SHUTLがオープンしてから慌ただしく走り抜けてきたなか、まだまだこれからですが、こうして振り返ることができてとても良い機会になりました。引き続きよろしくお願いいたします!

重松、宇都宮:ありがとうございました!

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(PROFILE)

重松 佑

Founder, Director

前職ではクリエイティブ・カンパニーである株式会社ロフトワークのシニアディレクターとして約50名のクリエイティブ・ディビジョンを率いる。2019年にShhh inc.を設立。2024年から女子美術大学芸術学部共創デザイン学科にて非常勤講師を務める。

(PROFILE)

宇都宮 勝晃

Co-Founder, Designer

仏師への師事後、Webプロダクションにてディレクションへ携わる。2012年よりpresent.の屋号でフリーランスのデザイナーとしての活動を経たのち、Shhh inc.を共同設立。

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SHUTLは現代の表現者が、伝統と出会い直し、時間を超えたコラボレーションを行うことで新たな表現方法を模索する創造活動の実験場です。スペース利用から、メディアへの掲載、コラボレーションまで、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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