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(INTERVIEW)

京都のローカルカルチャーとコミュニティを育むマガザンが担う、SHUTLの未来

ローカルコミュニティの力で文化を耕すチーム「マガザン」

2022年に解体された中銀カプセルタワービルのカプセルの魅力を再発見し、今の時代に即した文化を発信していく新たなアート&カルチャースペース「SHUTL(シャトル)」

建築家・黒川紀章が設計した新陳代謝をコンセプトとしたカプセル2基とそれらを格納する新たな空間を舞台に、日本文化そのものの新陳代謝の展開を目的とし、現代の表現者が日本文化と出会い直し、自らの表現と伝統を結びつけることで、「未来のオーセンティック」を生み出す実験場(ラボ)として2023年10月から動き出しています。

今回は、松竹の協働事業者として事業に参画し、SHUTLのスペースコンセプト&メディア設計・運営・自主企画の企画立案を担う株式会社マガザンのメンバーにインタビューを行いました。マガザンは松竹と同じ京都を創業の地とする創業6年目の企業で、京都で運営する「泊まれる雑誌 マガザンキョウト」などを拠点に、さまざまなカルチャーを編集し、伝えるプロジェクトを地域・コミュニティ/ステークホルダーとともに創出・推進しています。このSHUTLプロジェクトではどのようにマガザンの持つユースカルチャー感覚をインストールし、スペースコンセプトを体現していくのでしょうか? SHUTLグランドオープン前の慌ただしい最中、京都にいる岩崎さん、武田さんとSHUTLに常駐している黒田さんに話を伺いました。

 

インタビュアー  : 松本花音

マガザンが運営するマガザンキョウト(京都二条城そば)

まずは自己紹介をお願いします。

岩崎:株式会社マガザン代表の岩崎達也です。2016年に創業して、京都のローカルカルチャーを世の中に届け、その積み重ねで豊かな文化を作っていくというテーマで事業を展開しています。

岩崎達也 以下インタビュー写真撮影:佐々木明日華(MAGASINN Inc.)

武田:武田真彦です。マガザンではプランナーとして、プロジェクトのコンセプトを考えたり、プロジェクトマネジメントを担当しています。サウンドアーティストでもあるので、サウンドデザインもマガザンの仕事の中で手がけています。

武田真彦

黒田:黒田純平です。今はマガザンのパートナーとしてチームに参画しています。アートプランナーの立ち位置で、マガザンキョウトやSHUTLでの展覧会企画制作や、アート関係のプロジェクトにまつわる仕事をしています。

黒田はSHUTLに常駐しているためリモートで参加した

株式会社マガザンは2016年創業ということですが、どのようなプロセスで立ち上がり、事業展開しているか教えてください。

岩崎:会社の立ち上げのきっかけは「泊まれる雑誌」というコンセプトのマガザンキョウトという複合施設のオープンです。京都のローカルマガジンを空間化して、そこに宿泊滞在できたらより濃厚に京都のカルチャーを届けられるはずだ、というコンセプトの施設です。京都の街で生活していると、いろんな面白い人や出来事に遭遇するんですが、それを建物の中で展示やグッズ販売そして体験という形を通して、滞在する方達に京都の土着の魅力として伝えるという。そのうちにそれを面白がっていろんな人が来てくれるようになってきて、ローカルのコミュニティ、つまり地元の方、地域にお住まいの方、京都で働いている方と、国内外の旅行者の方たちとのつながりが生まれてきて。自分一人でできないこともコミュニティの力でできることが増えていって、そのうち館を飛び出して、京都を拠点にさまざまなカルチャープロジェクトを生み出したり育てたり、という活動を多角的に手がけるようになりました。

武田さんや黒田さんは、どうしてマガザンメンバーになったのですか?

武田:2021年にマガザンが京都の篠笛奏者の佐藤和哉さんのプロデュースを手がけていて、その時に岩崎さんと黒田さんが僕を外部委託のアーティストとしてアサインしてくれたのが一番最初のマガザンとの仕事です。その後、誘ってもらって社員になりました。
僕はサウンドアーティストとして電子音楽を作っているんですが、その佐藤さんの仕事は電子音楽と伝統的な楽器を掛け合わせて新しい曲を作るというプロデュースワークでした。それから、マガザンのPodcastを編集したり、マガザンのサウンドロゴを作ったりして…それをメンバーが良いと言ってくれて、そのうちマガザンが受託しているクライアントワークに繋がっていくようになりました。今では店舗や商品展示空間のBGMと、展覧会のBGMをつくったりしています。ここ(CORNER MIX)のトイレも通称「アンビエントトイレ」と呼んでいる、僕が作曲したアンビエントミュージックが流れる空間になっています!

CORNER MIX外観 撮影:河田 弘樹

ミックスジュース専門店「CORNER MIX」のジュースとホットドッグ 撮影:河田 弘樹

CORNER MIX

黒田:僕がマガザンに入社したのは2019年の4月末ですね。それまでは大学卒業と同時に展覧会企画やイベントコーディネートの仕事などをしていました。入社前に岩崎さんとの仕事でイベントやDJのコーディネートを武田くんと一緒にやったりもしましたね。入社してからは、マガザンキョウトの店長ポストで2年間店舗の運営とポップアップの企画をやっていました。
個人では、場所を持たないギャラリーというコンセプトのkeshik.jpという名前で、主に現代美術の枠組みで京都に限らずさまざまな地域の展覧会の企画をしています。マガザンキョウトでは、親しみやすいカルチャーの文脈で、ファッションブランドやイラストレーターさん、造形作家さんの展覧会などを企画しました。特に「オキモノ展示会」っていう造形作家さんの展示シリーズはコロナ禍中に始めて、そこからサテライト含めると6〜7回やっている人気企画ですね。

オキモノ展示会のビジュアル

メンバーそれぞれの個人の表現活動と、マガザンがプロジェクトで実現すべきミッションや事業をうまく掛け合わせているのがマガザンの特色のひとつですよね。岩崎さんはそういうメンバーの個性やオリジナリティをどう捉えていますか?

岩崎:そうですね、マガザンのメンバーは主に20〜30代の若いメンバーで構成されているんですけど、ほとんどのメンバーが何らかの表現活動を個人としてやり続けています。それぞれ才能の片鱗やポテンシャルを持っているものの、それがすぐに社会に接続されるまでには至っていない、平たく言えばそれ一筋で食べられているわけではない。だけど何かきっかけさえあればそれが花開くと思わせてくれる人たちが集まってきてくれています。そういうメンバーでチームを組んで、活躍するシーンを仕事として皆で作り合っているような感じです。

京都は学生の街、とりわけ芸術大学が多くあります。そのような京都らしさをマガザンは大事にしているとも言えると思いますが、その点についてはいかがですか?

岩崎:京都という街に対しては、まずは自分の「住みたい」というところから始まって、住んでみたらなんて面白い街なんだろうと。住みはじめてから8〜9年経ちましたけど、だんだん街のことがわかってきてもなお、すごく奥深い街だなと思うんですよね。
特に僕たちが大事にしている文化やカルチャーの領域は京都には特に長い歴史がありますし、新しいチャレンジをしている人もたくさんいる。かつ街が適度にコンパクトなので、みんなの顔がなんとなくわかってきて、あの人はこんなことをやっているとか、じゃあこれはあの人とやってみたいとか、そうした距離感で物事を動かせるのがこの街の面白さだと思います。
文化を着実に作って広めていきたいという点では、この街から学ぶことがたくさんあるし、他の都市の人達にとっても価値を感じてもらえるような事例やシーンも生まれてきていますよね。荒削りな芸術表現がのびのびと育つ風土がある。そういう環境を活かしながら、東京も含めて他の地域の仕事も、ご縁があれば一生懸命楽しみながらやっている感じです。

武田:マガザンは生粋の京都出身者は僕を含めて2名だけと少なくて、全体の1~2割くらいしかいないですね。

岩崎:長く住んでいると気づきにくい魅力ほど、外から来た人間が気づくというのもあるよね。ちなみにメンバーの8割くらいは、京都の大学の卒業生ではありますね。

黒田:僕も大阪出身で京都精華大学の卒業生です!

京都人は少ないけれど大学からずっと京都にいる人が多いというのは、京都の企業らしいメンバー構成とも言えますね。

マガザンのメンバー集合写真

SHUTLとマガザンの出会い、役割

SHUTL外観 撮影:archipicture 遠山 功太

ではいよいよSHUTLの話に移ります。マガザンがこのプロジェクトに関わるようになったきっかけはJOURNAL記事松竹のSHUTLプロジェクトメンバーに聞く、SHUTLに込めた想いとビジョンでも紹介されていますが、マガザンがこのプロジェクトに関わることになった経緯と、最初にどんなことを考えられたか、岩崎さんにお話しいただけますか?

岩崎:現在のプロジェクトリーダーでもある松竹様(以下、松竹)の山﨑さんが前職にお勤めの時からマガザンの活動を気にしてくださって、何か新しいことをしたい時の身近な相談相手として緩く長くお付き合いがあって、その繋がりの先で初めて具現化したのがSHUTLですね。最初から僕らに期待してくれていたのは、ユースカルチャーのポテンシャル。松竹は主に確立された伝統芸能を興行として続けられている企業ですけれど、何か新しいことをやりたいというときに、創業の地である京都の現在や若い人たちのリアルをわかっていて、かつ東京のことも知っている僕たちがタイミングよくいた。このピースがプロジェクトを共にする仲間としてイメージいただけたのではないでしょうか。
 実は最初はプロジェクト全体というよりは、コンテンツの一担当として京都を知る一員として関わっていたんですよ、しかもそれはカプセルを松竹が取得するよりも前からの話で。それがプロジェクトを進める中でコミットする範囲がだんだん大きくなってきて、かつカプセルを2基取得されるという要素も加わって…。そういう要素が絡み合ってきたときに、2022年後半あたりから全体のプロジェクトプランニングの部分からお話しするような関係になってきて。なんていうかもう勢いでがむしゃらにやったらここまで来たという感じです(笑)。
 実際、やってみたくても東京のスペースだから誰かは現地に常駐しないといけないわけですけれど、タイミングを同じくして黒田くんが「上京したい」って言い出したから(笑)。じゃあその座組でマガザンとしてチャレンジしよう!という流れでしたね。

規模が大きくかつ文脈の多い事業で、マガザンのみなさんにとっては新しい挑戦が多くあったことと思います。武田さんや黒田さんはこのプロジェクトチームメンバーにアサインされたとき、どう思いましたか?

武田:松竹に提案するにあたって、岩崎さんが考えた大筋のプランや言葉を整えて仕上げる作業を最初に手伝ったのですが、単純に楽しいなあと思いましたね。そこまで建築は詳しくはないんですが、その段階で黒川紀章やその建築、メタボリズムについて調べたし、松竹という会社の取り組みについてもリサーチして、このプロジェクトの可能性をすごく感じました。マガザンにとっても新しい領域になるし、松竹にとっての新しいチャレンジに一緒に取り組めるということに、きっと大変だと思うけどやってみたいというワクワクを感じました!

中銀カプセルタワービル 提供:中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト

黒田:僕は岩崎さんと一緒にこのプロジェクトの前身時代のコンテンツ検討の時から携わっていました。もともと中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト(中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト代表 前田達之さんに聞く、プロジェクトへの取り組みと想い | SHUTL)のSNSアカウントは個人的にフォローして見ていたので、黒川紀章建築の象徴的な建物が保存再生されていくんだなってイチ鑑賞者として見ていたところに、自分の企画の展覧会で在廊していたときに岩崎さんから電話がかかってきて、「中銀カプセルって知ってる?」って言われて(笑)。「もちろん知ってます!」って言ったら、「あのプロジェクト、そのカプセルを中に入れてギャラリーにするっていう内容になるんだけど、(関わるか)考えてみてくれない?」と。
僕も京都で展覧会企画の仕事をはじめてもう約7年くらい経つんですが、ちょうど東京に行ってみるのってどうなんだろうと考えていたところで。ちょうどタイミングよく機会をいただいたって感じです、最初はひよりまくってましたけど(笑)。最終的には腹を括って東京に出てきました!
東京で自分の展覧会企画をしたことは何回かはあるんですけど、今回のような事業として最初からしっかり関わって展覧会をやるというのははじめてなので、自分は今年で30歳になるので節目の仕事になるなと思って、頑張ってます。

武田:黒田君、ここ数ヶ月で強くなってきた感じがしますね(笑)

SHUTLプロジェクトをやりながらマガザンメンバー自身も成長していっている感じですね! では、具体的にこのプロジェクトで皆さんが何をやっているかを教えてください。

岩崎:僕はプロジェクト全体の基礎構想部分を松竹と一緒に事業プランも含めて組み上げていく部分と、マガザン側の総責任者です。無事SHUTLがオープンして花開くように全体をみています。
ちなみに、SHUTLっていうキーワードは僕が最初に閃いたものがそのまま採用されています。それはカプセルのビジュアルから連想したスペースシャトルのシャトルから採って、3つの要素を構造化して、松竹とも議論を煮詰めてかたちになりました。

「カプセルを取得できるかもしれない」って松竹から電話で聞いた瞬間に「宇宙」が思いついたんです。コロナ禍が明けつつあった頃で、ポジティブなモチーフがいいよなあとも思っていました。重力を超えて「可能性を打ち上げる」っていうキーワードを掲げてそれを松竹にお伝えしたら、呼応するかたちで「オーセンティックでありたい」というキーワードをいただきました。”本物” を示すオーセンティックと、未完成なユースカルチャーの間をどうやって接続しようかと考えて、「未来の」というキーワードに行き着いたんです。つまりこの場所がフックアップの場であったり、荒削りでもポテンシャルのある表現者と機会を共創することで、未来のオーセンティックや伝統へと誘う役割を果たせれば、長期的に松竹や東銀座エリア、そして日本の大きな資産になり得るんじゃないかと。
それを丁寧に紐解いて整えてくれたのが武田くんのプランニングです。武田くんはいつもそんな役回りをしてくれて、ありがたいですね…。

武田:僕は、このプロジェクトにおいての役割としてはプロジェクトマネジメント、プランニング、サウンドデザインに関わっています。全体の進捗管理をしながら、広報物やオリジナルグッズのクリエイティブの制作部分の品質管理や具体的なディレクションをしています。
SHUTLというキーワードを固めていく中で自分がやったこととしては、岩崎さんが思いついたコアアイディアと、松竹グループのミッション「日本文化の伝統を継承、発展させ、世界文化に貢献する。時代のニーズをとらえ、あらゆる世代に豊かで多様なコンテンツをお届けする。」というところを接続するロジックを整えたりしました。黒川のカプセル宣言(1969)を読んで、紐付けられるところを探したりもしましたね。「個人の自由が最大限に認められる社会選択の可能性の大きい社会」とか、「より自由に動ける機会と手段をもつことに価値観を見出す」とか、そういう精神性をキーワードとして引用しながら、伝統を継承し発展させるというミッションと重ね合わせることで、SHUTLと場所の全体のコンセプトの幹を太くしていくことはできたかなあ、と。
今(=インタビュー時点)はオープンに向けた準備真っ只中ですが、オープンならではの制作物がいっぱいで、並行して進めるものが多いので大変です…。 マガザンがやっているミックスジュース店のCORNER MIXで店舗のオープンは予行演習したけれど、それよりもプロジェクト規模が大きいし、クライアントワークゆえの擦り合わせや先方の承認フローがあるので、進め方ひとつとっても勉強になります。
そして、松竹メンバーの皆さんが素敵な方々ばかりであることに助けられているとも感じています(涙)。

岩崎:マガザンをフックアップいただいたことに始まり、常に建設的な議論をしていただける関係性で本当にありがたいですね。松竹にはいいステージを作っていただいたというか、一緒にチャレンジさせていただいている感覚です。

いろいろな対話からSHUTLが形になっているんですね。松竹もマガザンとのコミュニケーションを経て新たな感受性を取り入れているという側面もあるのかもしれませんね。 黒田さんは今回のメンバーでは一番年下ですけれど、どんなことをされているのですか?

黒田:僕はこのチームの中で唯一東京に常駐してSHUTLのスペース運営を担当しつつ、自主企画の展覧会の企画や制作の調整・取りまとめを担当しています。SHUTLはスペースレンタルも行うので、借りていただくための営業活動も重要な業務ですね。
今まで経験したことがない仕事もあるのと、これだけ多くの方が関わるチームとして全体を見て動くという経験が少ないので、日々プロジェクトがしっかり動いているということを意識しながらやっています。

SHUTL 上:スケルトンカプセル 下:オリジナルカプセル 撮影:archipicture 遠山 功太

マガザンと協働するパートナーたちとチームの力

岩崎:たくさんの社外パートナーの皆さんにも力を貸してもらっています。
マガザンの仕事の仕方は、社内のメンバーはコアメンバーとしてプロジェクトの中心で作用するよう動き、プロジェクトテーマや社内で不足しているスキル等に応じて、拠点を中心に広がっているコミュニティから繋がったみなさんをクリエイターだったりパートナーとしてチームにお迎えしていくコレクティブのようなやり方です。このプロジェクト、こういうテーマだったらこの人と一緒にやりたいとか、この人の力が必要だ、という感じでお声がけしています。

武田:最初から関わってもらっているのはWEBディレクションのShhhさんですね。

Shhh inc.

Shhhさんには今までにマガザンのWEBサイトも制作してもらってるのですが、そのデザインが立ち上がってくるまでのプロセス、皆を導くように質問をしてくれたりとか、一緒に考えてくれたりとか、コミュニケーションを積み重ねてもらえるというところが彼らの大きな特長です。今回のSHUTLでも、実際にスペースを立ち上げるまでの準備期間が短い状況で、どういうふうにデザインをまとめていくかというところではじめの方から一緒にやってもらえたというのが、WEBのみならず全体の制作物のデザインの世界観やルール、アウトプットの精度を高められた1つの要因だと思っています。
また、同じく重要なSHUTLのブランドロゴデザインを、三重野龍さんにお願いしました。

SHUTLロゴ

デザイナー三重野龍が考える、独自の表現の原点とSHUTLへの応答

三重野さんとは同じ京都をベースにしている縁で仲良くさせていただいていて、手掛けられているVOUのグッズをマガザンキョウトで取り扱ったりもしている関係です。SHUTLの宇宙、スペース感とカルチャー感をどう融合させるかというところで、やっぱり三重野さんの稀有なグラフィックの力が鍵になるし、それがSHUTLのコンセプトにすごく合うだろうというのは松竹もマガザンチームも満場一致でしたね。
あとはカメラマンの山根かおりさんには、カプセルの移動からプロジェクトのドキュメントや空間そのものの、写真と動画の撮影をお願いしています。

2基のカプセルがやってくる!移動の模様を動画でご紹介します | SHUTL

そしてオープンにあたってのスペースやコンセプトテキストの英語翻訳は、ジュリエット・礼子・ナップさんにサポートいただきました。

岩崎:今回のプロジェクトは社会的資産、インパクトになる可能性があるとプロジェクトチーム全員が発足当初から考えていたので、クリエイティブの部分だけでなく、プロジェクトマネジメントや広報(PR)の部分でも社外の方にサポートいただきました。
プロジェクトの立ち上げ段階って、内容や価値がまだわかりやすく見えていないので、だからこそ周囲にその意義を伝えることはすごく難しい。でもそれが大事だから今回は特にPRを重要視して、オープン前から丁寧にプロジェクトの進捗をプレス関係者にリリースでお送りしたり、メディア担当者との関係性を築きながら考えを届けてもらったりということを積み重ねてきています。今まさにこれが然るべき形で届くのを見守っているところですね。

3人以外のマガザンメンバーも大活躍してますよね、このSHUTLプロジェクトでは。

武田:はい! イラストレーターの岸本敬子には、SHUTLの空間利用イメージのイラストレーションをお願いしました。Shhhさんと三重野さんとで構築していったデザイントーンのなかで、SHUTLに対して人が集い、交流してもらうコミュニティスペースとしてのイメージを膨らませてもらうには岸本のイラストの力が必要でしたね。他にもデザイン部分で井上みなみ、古山愛子、あとオープニングレセプションではCORNER MIXの榎藍香も協力してくれました! メンバー一丸となってSHUTLを打ち上げています!

SHUTL利用イメージ図 Illustration:岸本敬子(MAGASINN Inc.)

黒田さんはアートプランナーやスペースマネージャーとして、また別の方ともお付き合いがありますよね。

黒田:僕の場合は、現地でいろいろな、例えば自主企画に参加される作家さんとはかなり綿密にコミュニケーションを取っていますね。そしてスペースをレンタルしていただけそうな様々な業種の方ともお話しや、相談をしています。
自主企画では、初めてご一緒する方にも思い切ってお声掛けさせてもらったり、かねてからアイディアを温めていた組み合わせをSHUTLのコンセプトと融合させながらお誘いしたりして、貴重な機会をいただいています。

黒田さんのキュレーションそのものが、SHUTLに関わる中で変わっていった部分があったということですか?

黒田:そうですね。今まではどちらかというと作品の販売収入も見据えたプライマリー・ギャラリー的なテンションの展覧会が多かったのですが、体験、鑑賞を中心とした、例えばインスタレーションをメインに据えるような形の展覧会企画も考えるようになりました。
あとは、今まではホワイトキューブや京都なら町屋での展覧会はやったことがあったんですけど、SHUTLはカプセル2基ありきの特殊な空間なので。作家さんもはじめてのパターンだっていう方が当然多くて、空間の特徴をうまくいかした使い方や作品コンセプトを、議論しながら詰めていっていますね。

武田:アーティストによっては、環境からインスピレーションを得たり、使い方を自由に楽しんでもらえる空間なのではと思いますね。そういう意味でもチャレンジですね。

その最初の回答が、オープニング展示シリーズ「伝統のメタボリズム」でも感じられるでしょうか。

【展覧会企画】SHUTLオープニング展示シリーズ 第1期 「伝統のメタボリズム〜言葉と文字〜」

黒田:もともと伝統という言葉は知っていても、自分で伝統や継承性というものに重きを置いて企画をしたことはありませんでした。そもそも伝統ってどうやって生まれてくるんだろうということを出発点にいろいろ調べたり考えたりする中で、イギリスの歴史家エリック・ホブズボームの「伝統は創られているものである」という言葉(※)にヒントを見出したんです。SHUTLの「伝統と現代の新たな接続方法を生み出す実験場」っていうコンセプトとそれを呼応させて、「伝統のメタボリズム(新陳代謝)」という企画コンセプトを思いつきました。
そのコンセプトを基に、伝統がコミュニケーションによって更新されるというプロセスに着目して、「記憶」「継承」「変容」という要素を軸に「言葉と文字」「様式の変容」「見立て」という3部作の展示シリーズとして整えました。

※「創られた伝統」(編:エリック ホブズボウム、テレンス レンジャー 翻訳:前川 啓治、梶原 景昭、紀伊国屋書店文化人類学叢書、1992) より

アーティストはその企画コンセプトを聞いてどんなリアクションをされますか?

黒田:みなさんテーマ的にもご自身が選ばれていることに理解を示してくださったり、伝統が創られているっていうことに同意してくれますね。どこかで伝統という言葉を遠い存在、他人事のように捉えていたけど、やっぱり自分達が美術作品を発表していること自体も個人としては伝統になるものとして作っているつもりだとか、そういう話をして。
改めて考えると今回のコンセプトってとても当たり前のことを言ってるなと思うんです。尊大に感じていた「伝統」っていう言葉のイメージを変えていきたいという、作家さんの思いを表現する場になったらいいなと。

それは楽しみですね! 早く体験したいです。

マガザンが見据えるこれからのSHUTL

では最後に、これからのSHUTLについて、それぞれのやりたいことや、どう使われていってほしいか教えてください。

黒田:やっぱり改めてSHUTLって今までにない展示空間だなと思います。どう使っていいのか戸惑う方もいらっしゃるだろうし、逆にこう使ってみたいなって期待してくださる方もいらっしゃると思うんですけど。今僕自身はこの空間をどう活かすかってことにすごくモチベーションを感じているので、他ではない空間で、これまでやったことないような展覧会やイベントを企画したり、レンタル利用のサポートをできたらと思っています。
そして東銀座エリアでSHUTLから始まるいろんなコミュニティをちゃんと形成していきたいです!…逆に京都の人たちが来てくれたら僕が離さないかも(笑)

武田:僕は自分が音を作っているのもあって、音楽イベントをやりたいですね! あとすごく相性がいいんじゃないかなって思っているのは、コンテンポラリーなパフォーミングアーツですね。最初はどうやって使うか模索しながら自分も企画しつつやっていきたいなあと。あっ、僕は早速プレオープンパーティでDJをやるのと、年内に「Synclee(シンクリー)」という音の作品/プロダクトの受注会をやります!

2023年10月6日に開催されたプレオープンパーティの様子(撮影:山根かおり)

岩崎:このプロジェクトに関わるすべての人が、可能性にチャレンジして、それがいい形になって、豊かな文化とか、新しい伝統に繋がっていったらいいなと思ってます。あとは、このSHUTLというプロジェクトは、東銀座エリアを日本文化の発信地として発展させていきたいという松竹のビジョンの一貫だと伺っています。なのでプロジェクトの次のステップも見据えながら、みんなでいろんなチャレンジをしていきたいなと思っています。
そして、マガザンのカルチャーのエッセンスが初めて東京にインストールされるということになるので、チャレンジを応援してもらえたら嬉しいですし、京都のみなさんともこれから現地で一緒に企画できることがあれば最高です!

SHUTLプロジェクトが成功して、伝統文化や既存の表現に携わる人たちと、現代の若い表現者が交わり、文化そのものが新陳代謝する場が本当に生まれたらすごくエポックメイキングなことだと思います。 これからのSHUTLに期待しています! 今日は貴重なお話をどうもありがとうございました。

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